●ふるさと納税を取り巻くお金の流れ

自浄能力を期待していた野田氏としては裏切られた格好で、翌18年4月には高市氏の通知を踏襲した上で、返礼品を地場産品に限ることも要請。そしてついに同年9月には法改正による規制強化を打ち出すに至った。制度の生みの親である菅氏も「一部自治体のせいで我が子が悪者扱いされるのが我慢ならないようだ」(総務省幹部)といい、野田氏による制度見直しを支持した。
お金は市役所に残らなくていい
返礼品はそもそも制度の中にはなく、実はそのルーツも「どこがいつ始めたかというのは分からない」(保田准教授)という。それがいつのまにか独り歩きを始め、地方経済に巨大な官製需要を生んでいった。
官製需要に戸惑ったのは、冒頭で紹介した平戸市のような、人口減少や高齢化の進展で地域の生産力に限界があるまちばかりではない。肉用牛や豚、鶏の産出額が全国一と、国内有数の畜産拠点である宮崎県都城市もまた、平戸市とは違った意味で官製需要に翻弄された。
芋焼酎「黒霧島」で有名な焼酎最大手の霧島酒造のおひざ元でもある都城市だが、九州以外ではしばしば、「みやこのじょうし」ではなく「とじょうし」と誤読されるなど全国的な知名度向上が課題だった。そこで、地域のPRや特産品の販路拡大のツールにしようと、14年10月からふるさと納税に力を入れると、早くも15年度には42億3000万円を集めて全国1位に立ち、翌16年度も73億3000万円で2年連続首位となった。
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