サイバー犯罪者の低年齢化が著しい。世代別で最も多いのが14~19歳の未成年だ。「武勇伝を自慢すると周囲が称賛してくれる」という幼稚な動機の陰で大勢の被害者が泣いている。10代で数々の悪事に手を染めた元ハッカーの告白から、現代日本が抱える「ネットの闇」に迫る。

承認欲求を満たすためにサイバー犯罪に手を染める孤独な未成年が増えている(写真=shutterstock)
承認欲求を満たすためにサイバー犯罪に手を染める孤独な未成年が増えている(写真=shutterstock)

 東京・渋谷のファミリーレストランに、成人して間もないというその青年は約束の時間よりやや遅れて現れた。

 コンピューターウイルスをばらまき、企業のホームページを改ざんし、復旧の見返りに金銭を脅し取る。成人を迎えるまでにネットで片っ端から悪事を試みたという青年は、大胆不敵な犯罪者にはとても見えない。細身で色白、口調は丁寧かつ控えめだ。

 「誌面では、身元を伏せていただけますか」。要望通りに匿名にすると伝えると、彼は相好を崩し、身の上を話し出した。

すべての始まりは不登校から

 「現在、母親と暮らしています。仕事はしておらず、ニートです。不登校になったことがきっかけで、ネットの世界にのめり込みました。昼過ぎに起床して、翌朝までパソコンに向かっています」

 対人関係に悩み、不登校になったのは中学生の時だという。以来、あり余る時間と寂しさを埋めるようにネットの世界に没入していった。

 自分でも制御できないほどネットに熱中する「ネット依存症」に陥る中高生はここ数年、急増している。厚生労働省の研究チームは、ネットへの依存度が病的なレベルにある中高生が2017年度に全国で93万人に達したと推定する。5年前の推定値と比べて2倍近くに跳ね上がっており、病的な依存の一歩手前と認められる予備軍も161万人と見込まれている。

 もっとも、オンラインゲームやSNS(ソーシャルメディア)など他人に迷惑をかけずにネットにのめり込むのであれば、それは本人の自由とも言える。だが、ファミレスで対面した青年が没頭していたのは、ハッキングだった。

 「不登校になって間もない14、15歳のころからハッキングのまねごとをするようになった。ハッキングの方法はネットで学び、ウイルスなどの攻撃ソフトもネットで仕入れた」と青年は振り返る。

 ネットではハッキングの仕方を教えるウェブサイトや動画が多数公開されているうえ、攻撃ソフトも簡単に手に入る。特殊なブラウザを使わなければ閲覧できない「ダークウェブ」と呼ばれる「ハッカー御用達」の闇サイトにわざわざアクセスせずとも、一般のサイトで多く見つけることができる。

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