リユース市場の成長とともに宅配買い取りサービス業者が増えている。利便性の高さが売りだが、利用者を食い物にする悪質業者も存在する。期待の新市場を成長させるには、一刻も早い業界の浄化が欠かせない。
大阪府に住む40代の村野氏(仮名)は昨年末、インターネットで見つけたサイトで、不要になった中古本100冊ほどを買い取りに出した。利用したのは宅配買い取りサービス。「売りたいスマホやブランド品、書籍などを箱に詰めて申し込めば、自宅まで宅配業者が取りに来てくれる。後は査定結果の連絡を待ち、提示された金額に納得がいけば、そのまま銀行口座に振り込んでもらう仕組み」──。少なくとも村野氏はそう理解していた。

勝手に振り込まれた800円
サイトに掲載されている情報だと5000円にはなりそうだった。「4000円台の買い取り価格を提示されたら手を打つか」。そう考えて待っていたが、業者からは1週間たっても2週間たっても連絡がない。気になって、契約が成立した際の振込先として指定した銀行口座を確認してみると、業者名で想定よりもはるかに安い800円が既に振り込まれていた。
納得がいかない村野氏はキャンセルしようとした。ところが業者とのやり取りで、査定額がいくらでも、買い取りに承諾する「自動承認」という条件で申し込んだことが判明。サイトでは自動承認にするためのチェックボックスは極めて目立たない場所に配置されており、事前にチェックが入っていた。
「落ち度は自分にあるかもしれないが、メルマガの受信などならともかく、売買契約の重要な部分で、自分たちの有利な項目にデフォルトでチェックを入れているのはいかがなものか」と村野氏。
六本木法律事務所の吉村健一郎弁護士は、「承認するつもりがないのに承認になっているので、民法95条や電子契約法に基づいて契約を無効にできる可能性はある」と説明する。自動承認について明らかに錯誤するようにサイトが作ってあるか、利用者が自動承認になる確認があったのに見落としたのかどうかで判断が分かれるという。
「店舗に持ち込む手間がない」「対面でのやり取りが不要」──。そんな手軽さが受け、急拡大している宅配買い取りサービス。買い取り価格比較サイト「ヒカカク!」によると、サービス提供事業者は現在3000を超えた。業界の老舗で大手のブックオフコーポレーションもその一つで、2018年の宅配買い取りサービス件数は37万件。ここ数年、年率約10%増で拡大中だ。
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