著名建築家・丹下健三氏の代表作の一つである旧香川県立体育館(高松市)の解体が決まった。歴史・文化的観点から解体撤回の署名を集めて香川県に提出したが、県側の方針は覆らなかった。10年間にわたって保護活動を続ける中、不透明な行政の対応にも不信感を募らせる。

[一般社団法人・船の体育館再生の会代表]
河西 範幸氏
1978年香川県生まれ。大阪芸術大学建築学科卒、1級建築士。2008年に高松市で建築設計事務所を設立。14年から船の体育館再生の会の前身となる保存の会を設立。23年に共同代表として地域政党「かがわ船の党」を設立。
船のような曲線を描く屋根が特徴で、地域の体育館として親しまれた
船のような曲線を描く屋根が特徴で、地域の体育館として親しまれた

 旧香川県立体育館は1964年に完成し、特徴的な外観から「船の体育館」と呼ばれています。64年の東京五輪開催を控え、スポーツ熱の高まりを受けて建設された施設です。屋根の両端が曲線を描き、和船を連想させる外観。ケーブルで屋根をつるして柱のない大空間を実現した「つり屋根構造」が特徴です。

 老朽化が進み、98年に実施された耐震診断では耐震強度の不足が指摘されました。県が改修工事の入札を行いましたが、応札者がいませんでした。約5億7000万円という当時の予算が少なかったのと、耐震工事の難度が高く、対応できる業者がいなかったのが原因のようです。

 最終的に2014年に閉館が決まり、解体か用途変更かを検討する段階が長く続きました。倉庫として活用されていますが、立ち入り禁止で放置されている状態が続いています。その間に高松市内の別の地区で新県立体育館の建設が決まりました。

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