利用低迷で国の補助金が絶たれ、34年前にJR北海道・旧天北線から運行を引き継いだ代替バスの一部廃止が決まった。自治体でワンボックスカーを用意し、事前予約制で廃止区間の輸送を担うが、観光客誘致への悪影響を懸念する。ロシアに近いオホーツク海沿岸に位置し、安全保障上も重要な地域だとして、国に公共交通のあり方の再考を求める。

南 尚敏氏
北海道の最北部を走る路線バス「天北宗谷岬線」(稚内~音威子府、約170km)のうち、浜頓別~音威子府の区間(約60km)が今年10月で廃止となります。1989年に鉄道路線の旧天北線がバスに転換されて30年余り。バス路線ですら定期運行を維持できなくなったことは、地域の公共交通のあり方を検討する「天北地域生活交通確保対策協議会」(沿線自治体で構成)の会長としても、地元に暮らす一人としても、本当に忸怩(じくじ)たる思いです。

天北線は、大正時代に木材や海産物などの資源を運ぶために現在の音威子府村から中頓別町、浜頓別町、猿払村を経て稚内市まで敷かれました。オホーツク海に面した地域では、冬は流氷があるため船を出せず、道路も今ほどに整備されていなかったため鉄路が貴重な輸送手段でした。
戦後、モータリゼーションが進んで利用者が減り、80年に国鉄再建特別措置法に基づく第2次廃止対象路線となりました。ただ、冬のバス運行には雪道の不安があるとの理由から廃止は保留となりました。

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