長崎県と佐世保市が計画するダム建設の差し止めを求めた裁判で、住民側の敗訴が確定した。計画が本格始動してから半世紀にわたり反対してきたが、このままだと先祖伝来の土地が水没する。自然豊かな集落を子や孫の世代に残せるよう、座り込み抗議を継続し、抵抗の構えを崩さない。

炭谷猛氏
私は生まれた時から現在に至るまで、ずっと長崎県川棚町の川原(こうばる)地区に住んでいます。長崎県と佐世保市が現在、川原を流れる石木川をせき止めるダムの建設を計画しています。完成すれば、自宅と一緒に古里が水没してしまいます。
わらにでもすがる思いで、県と市を提訴したのは2017年のことです。しかし最高裁判所は22年9月、川原の住民や支援者の上告を棄却し、私たちの敗訴が確定してしまいました。
最初から行政訴訟で勝つのは難しいことは分かっていました。それでも弱い立場の人々を救うのが裁判所の役割だと期待していただけに、残念です。
私は自分のことを、「敗軍の将」だとはまだ思いたくありません。川原の住民は依然として闘っています。ダム本体の工事と、水没する予定の県道の付け替え工事を阻止するために、連日のように2カ所の現場で座り込みを続けています。ダム建設を中止に追い込むべく、法的にも何かしらできる余地が残っているんじゃないかと信じています。
水需要は減っているのに
ダム建設は理にかなっていないというのが私たちの主張です。県などは、ダム建設の目的の一つに治水を掲げていますが、堤防の増強と川ざらいで水害は防げるはずです。
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