JR北海道と沿線4市町がJR留萌線の廃止を決定し、北海道留萌市から鉄路が消える。存続させる場合の市の負担額が年約6億円と大きく、「廃線容認」にかじを切った。廃線を「時代の流れ」と受け止め、跡地利用を通じた地域の活性化策を模索する。

中西俊司氏
JR留萌線の廃止が、留萌市を含む沿線4市町とJR北海道の間で8月30日に決まりました。留萌駅から石狩沼田駅までは2023年3月末に、残りの石狩沼田駅から深川駅までは26年3月末に廃止となります。沿線自治体の首長の一人として、110年以上続いた鉄路を閉ざす歴史的な決断を重く受け止めています。
留萌市は北海道北西部に位置し、日本海に面しています。留萌線は1910年の開通以来、留萌港への石炭・木材・海産物の輸送や地域住民の交通手段として地域発展の礎となってきました。しかし、地域の主力産業である水産加工業の衰退、国の出先機関の統廃合、北海道の支庁制度の見直しなどが続く中、沿線人口は減少。60年代後半のピーク時に4万人を超えた留萌市の人口は現在約2万人となっています。車社会が進んだ影響も大きく、鉄道の利用者は減少が続き、国鉄時代の87年には留萌にあったもう一つの羽幌線(留萌~幌延間)が廃止となりました。
道路整備で利用減に拍車
一方、92年には留萌線に平行する形で高規格幹線道路「深川・留萌自動車道」の建設がスタート。その後、貨物運行は廃止となり、旅客の利用者数の減少にも拍車がかかりました。
市は手をこまぬいていたわけではありません。市職員出身の私は99年に留萌線がNHKのドラマの舞台になると、JR北海道と協力して観光事業に取り組みました。JR北海道がSLを走らせ、いっときは観光客が増えたものの、ブームは一過性で利用者の本格的な回復はできませんでした。
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