沖縄県の離島への玄関口に隣接し、県民・観光客に愛されたホテルが閉館した。26年強の歴史に幕を閉じたのは、観光業界を苦しめる新型コロナウイルスだけが理由ではない。運営を手掛けてきた沖縄観光業界の「顔」は、行政などへの不信感を漏らす。

平良朝敬氏
沖縄県で9つのホテルを運営してきましたが、そのうちの1つを2021年10月末に閉鎖しました。離島へのフェリーが発着する那覇市泊港の「沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハ(以下、アーバンリゾート・ナハ)」です。
開業は1995年です。国はバブル期に、官民が連携して港湾周辺を開発する構想「ポートルネッサンス21」を立ち上げ、泊港も対象になりました。港にターミナルビルを建てて商業施設を入れ、海の博物館など文化施設も開業させれば多くの人でにぎわう──。そんな夢のある話に賛同し、ターミナルビル内でアーバンリゾート・ナハを開いたのです。
実現しなかった一大構想
それから約27年。ターミナルビル「とまりん」は建っても商業施設は入らず、ただのオフィスビルになった。その他の計画も財源の問題などで何一つ実現しなかった。結果、開業当初から赤字経営が続いてきました。
実は2008年に一度、ホテルを閉じました。ビルを所有する那覇市の第3セクター、泊ふ頭開発との賃料引き下げに向けた交渉がまとまらなかったためです。その後、09年に再入居し、再びホテルの営業を始めます。これは将来的に弊社がビルのホテル部分を区分所有する、つまり買い取る方向で検討することを了承してもらえたからです。買い取りさえできれば、ホテル経営は健全に続けられると考えていました。
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