ジビエブームで徐々に市場を広げてきたエゾシカ消費が大きく低迷している。ハンターの高齢化など悪条件も重なり、市場再生へのハードルは高い。それでも「何とか売る工夫を続けていきたい」と前を向く。

三坂一茂氏
新型コロナウイルスの影響で、私たちが手掛けるエゾシカ肉の需要が消えてしまいました。感染拡大が始まる2年前には、多いときで月に1トンほど売れていましたが、それが一時はゼロ。エゾの杜の売り上げでいえば、2019年に2500万円程度あったものが、21年には600万円くらいまで減ってしまいそうです。
ハンバーグやジャーキーなど加工食品も生産・販売していますが、エゾシカ肉は嗜好品ですから、やはり宿泊施設や飲食店による大量消費がないと量はさばけません。営業時間の規制や自粛が効いています。
かつてエゾシカ肉は、「硬い、臭い」というイメージがあり、地元・十勝エリアですら食べる習慣がありませんでした。それが、近年は「ジビエ」として徐々に市場に浸透しつつあり、手応えを感じていました。この流れが先細ってしまわないか懸念しています。
害獣駆除にも課題

肉の調達面にも課題があります。エゾシカは畑を荒らす害獣です。北海道の調査(20年度)では、野生鳥獣による農林水産業の被害額50億円のうち、エゾシカが40億円余りを占めました。
有害鳥獣駆除の今の仕組みでは、エゾシカを駆除した場合、1頭当たり数千円の報酬が交付されます(編集部注:細かくは自治体によって異なる)。食用に活用すれば報賞金も追加されますが、金額にあまり差がありません。駆除の際に胴体を撃って内臓が損傷してしまうと、雑菌が周囲の肉に入り込み衛生上、食肉に使えなくなります。(内臓を傷つけない)頭や首で仕留めた場合と報賞金の差を付ければ、食肉活用がもっと進むかもしれません。
このあたりのエゾシカは畑を荒らす害獣である一方で、豆や小麦、ジャガ芋、ビートなど、幅広い農作物を食べることで3歳で100kgくらいまで成長します。エサがいいので、食肉としても、1年を通して軟らかく、脂が乗っておいしいのです。
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