東京・日暮里に構える小劇場「d-倉庫」が今年末で閉館する。コロナ禍で売り上げが落ち込んだだけでなく、精神的な疲労や士気の低下も響いた。代表は「もう経営はあまりしたくない」と漏らす。

[d-倉庫・代表]
真壁茂夫氏
埼玉県草加市生まれ。舞台芸術学院卒業後にパフォーマンスグループ「OM-2」設立。活動歴は30年以上。高校時代に演劇部で演出の面白さを実感して以降、俳優ではなく演出を手掛ける。

 2008年から約13年間、日暮里で小劇場「d-倉庫」を運営してきました。もともとは演劇学校を卒業してから立ち上げた劇団の公演の場として、田端に作った劇場「田端die pratze(ディ・プラッツ)」が原点です。その後、神楽坂、麻布へと拠点を移すことになり、今の日暮里に至ります。

 ディ・プラッツという名前は、当時交流のあったドイツ人のパフォーマーから「クマの手」と「不器用な手」という意味があると提案してもらいました。

 不器用な手というのが気に入り、不器用な私たちが一生懸命作った劇場だという意味で採用しました。でも、他のドイツ人には「そんな意味あるのかな?」と言われ、本当のところは分かりません。d-倉庫はもともと布を保管しておく倉庫だったそうで、ディ・プラッツの倉庫という意味で劇場名をd-倉庫にしました。

予約は今も高水準だが……

 d-倉庫は演劇だけではなく、ダンスやパフォーマンスなどの公演で若手からベテランまで幅広い劇団に使っていただいています。特徴としては高さ4.7mの天井と、広いロビー。普通の小劇場はあまりロビーがないですし、空間的な広さも利用してくれる方々に気に入ってもらえている点だと思います。おかげさまでリピート率はものすごく高いです。

 予約状況をいうと、d-倉庫は今も含めてほとんど空いていません。コロナ禍ではもちろん中止になった劇団はたくさんありますが、利用契約だけでみると今年も1日も空いておらず、その意味では非常にありがたい限りです。

 ただ、コロナ禍では何度も行政から夜8時までの時短営業を要請されてきました。一般的な芝居は夜7時とか7時半くらいから始まるものが多いので、8時に終わることはなかなかできません。既にチケット販売も告知もしているものを、急に来週から「じゃあ6時開演にします」とはしにくい。

 6時開演にずらした団体さんもありますが、チケットを買われたお客さんの6割くらいしか来られません。そうなると公演は中止せざるを得なくなります。

 当然、売り上げは落ち込みます。去年は国や東京都からの補助金がいくつかあり、赤字幅を少しでも小さくできればと思いましたが、それでも全然足りません。そこで去年7月にクラウドファンディング(CF)を実施し、9月までに276万円のご支援を頂きました。お金自体ももちろんですが、370人と多くの方々に支えていただけたのも気持ち的にありがたかったです。

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