日本を代表する演出家、蜷川幸雄氏が率いたシニアの劇団が12月に解散する。劇団員の高齢化に加え、コロナ禍が追い打ちをかけた。劇場では新芸術監督のもと、違う形でシニアの輝ける場所を模索する。

渡辺 弘氏
彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市)を活動拠点とする高齢者の劇団「さいたまゴールド・シアター」を2021年中に解散することを決めました。演出家の故・蜷川幸雄さんが中心となり、55歳以上のシニアのみで構成する劇団として06年に創設し注目を集めていましたが、残念ながら高齢化やコロナ下で続けるのが難しくなってしまいました。
48人の劇団員でスタートした当劇団は、創設時から一度もメンバーの入れ替えをしておらず、劇団員も平均年齢が現在81歳を超えました。蜷川さんが16年になくなったあとも頑張って続けていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大で、ご家族も心配するため集まって練習することすらもままならなくなり、潮時と判断しました。
“普通の生活者”を演者に

「プロとしての訓練を受けていない、年齢を重ねた生活者が表現する演劇を作ってみたい」。当劇場の芸術監督に就いた蜷川さんが長年温めていた構想を実現すべく、06年に立ち上げたのが当劇団です。
オーディションの応募総数は1273人。北海道から九州、さらにはハワイから日帰りで来た人もいました。蜷川さんは応募要件を満たす55~80歳までの1000人以上のうち、全員の審査に立ち会いました。専業主婦や元アナウンサー、元自衛隊員など様々なバックグラウンドの人が集まりました。
「高齢者をシルバーと呼ぶのは嫌なんだ。クレジットカードでも何でも、最後はゴールドだろ?」。蜷川さんの一言で劇団の名前も決まりました。
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