祭りや縁日で長きにわたり親しまれてきた「型抜き」が危機にひんしている。主要な販路であるイベントや祭りが、コロナ禍で相次いで中止に追い込まれた。「このままでは子供たちが型抜きに触れないようになる」と文化の存続を危惧する。

橋本健司氏
新型コロナウイルスの影響がここまで長引くなんて、1年前には考えもしなかったことです。去年の春には「夏までには落ち着くかな」と楽観的に考えていましたから。でも結局は最も大きい夏祭りの需要が消滅して、それ以降、主要な販路であるイベント関連の売り上げは戻らないままです。
祭り需要以外にもスーパーマーケットや駄菓子屋といった一般消費者向けの商品もあるので、「一家離散」を考えるような状況ではありませんが、売り上げは4割近く減りました。パートの給料は下げられませんから、家族の給料は35%ほど減額しています。今年も年明けから再び緊急事態宣言が発令されましたし、2年連続で祭りが無くなればかなりの痛手になってしまいます。
「国内唯一」の型抜きメーカー

当社の歴史をひもとくと、戦前に和菓子屋として私の祖父が事業を始め、型抜き菓子の製造は1960年代から始めています。当初はべっこうあめに型を押したものを作っていたようですが、あめは気温が高いと溶けてしまう。「何とかならんか」と祖父が考えた先に行き着いたのが、当時東京で流通していた片栗粉と砂糖を混ぜ合わせて作られた現在の型抜きだったそうです。当初の主な販路は紙芝居屋でしたが、70年代以降は祭りの屋台でなじみの出し物になりました。
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