祭りや縁日で長きにわたり親しまれてきた「型抜き」が危機にひんしている。主要な販路であるイベントや祭りが、コロナ禍で相次いで中止に追い込まれた。「このままでは子供たちが型抜きに触れないようになる」と文化の存続を危惧する。

[ハシモト社長]
橋本健司氏
1972年、大阪府生まれ。大学卒業後の96年にハシモトに入社。2010年に父親の跡を継ぎ3代目社長に。13年に大阪の名物・名所を「型」にした「なにわのカタヌキ」を発売するなど販路拡大に努めてきた。

 新型コロナウイルスの影響がここまで長引くなんて、1年前には考えもしなかったことです。去年の春には「夏までには落ち着くかな」と楽観的に考えていましたから。でも結局は最も大きい夏祭りの需要が消滅して、それ以降、主要な販路であるイベント関連の売り上げは戻らないままです。

 祭り需要以外にもスーパーマーケットや駄菓子屋といった一般消費者向けの商品もあるので、「一家離散」を考えるような状況ではありませんが、売り上げは4割近く減りました。パートの給料は下げられませんから、家族の給料は35%ほど減額しています。今年も年明けから再び緊急事態宣言が発令されましたし、2年連続で祭りが無くなればかなりの痛手になってしまいます。

「国内唯一」の型抜きメーカー

製造の自動化ができない型抜き。現在も手作業で製造している

 当社の歴史をひもとくと、戦前に和菓子屋として私の祖父が事業を始め、型抜き菓子の製造は1960年代から始めています。当初はべっこうあめに型を押したものを作っていたようですが、あめは気温が高いと溶けてしまう。「何とかならんか」と祖父が考えた先に行き着いたのが、当時東京で流通していた片栗粉と砂糖を混ぜ合わせて作られた現在の型抜きだったそうです。当初の主な販路は紙芝居屋でしたが、70年代以降は祭りの屋台でなじみの出し物になりました。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1875文字 / 全文2643文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「敗軍の将、兵を語る」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。