コロナ禍と政府の旅行需要喚起策に翻弄されながら、経験したことのない1年を過ごした。「Go To」停止に伴って予約のキャンセルが再び続出。影響額は城崎温泉全体で35億円に上る。しかもかき入れ時での直撃とあって、元通りにするための手法をなかなか見いだせないでいる。

[城崎温泉旅館協同組合理事長]
芹澤正志氏
1964年生まれ。兵庫県立豊岡高校卒、静岡・京都などでの板前修業を経て父経営の旅館を継ぐ。2000年に現在の「お宿 芹」を新設、社長・オーナー・シェフを兼ねる。17年から城崎温泉旅館協同組合理事長、78事業者が加盟している。

 新型コロナウイルスとの闘いは、ここ兵庫・城崎温泉でも長期化を強いられています。旅館事業者はみな、昨春の緊急事態宣言下で経験したことのない苦境に追い込まれ、その後の「Go To トラベル」期間中で想像以上に盛り返し、停止されると再びキャンセルが続出。誰かを責めるつもりはありませんが、自分では制御不可能。まるでジェットコースターのような状況にもどかしさとやるせなさが募ります。

川沿いに響くげたの音

<span class="fontBold">城崎温泉の外湯めぐりを楽しみ、大谿川沿いを歩く観光客はなおまばらなままだ</span>
城崎温泉の外湯めぐりを楽しみ、大谿川沿いを歩く観光客はなおまばらなままだ

 城崎温泉は街に7つある「外湯めぐり」が名物で、平安時代以前からの長い歴史を持ち、旅館組合には78の事業者が入っています。近年は、「浴衣の似合う街」として注目を集め、色とりどりの浴衣を羽織ったお客さんたちが大谿川(おおたにがわ)沿いをげたを鳴らしてゆっくり歩いていく。その音を聞いているだけで心安らぐこの温泉街に私たちは誇りを持ち、年間で100万人ほどの観光客を集めてきました。

 私も中心部から少し離れた所で旅館を営んでおり、客室は計11。決して規模は大きくはありませんが、真心込めたおもてなしと、地元特産の但馬牛や松葉ガニの料理を売りに、年商も1.5億円ほど確保できていました。もちろん、コロナ禍の前までの話ですが。

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