福島・会津若松で運転代行業を営んできたが、コロナ禍で状況が一変した。街の夜の明かりも人通りも消え、「利用者が片手で数えられる日」が続く。公的な補償も十分とは言えず、忍び寄る廃業の足音にあらがう手段を見いだせていない。

本田裕康氏
新型コロナウイルスの感染拡大の影響は私たち運転代行事業者の経営も確実にむしばんでいます。営業地盤の福島・会津エリアもその影響の例外ではなく、公的な補償も飲食店に比べ少ない。これから事業を続けていけるのか、私を含め事業者はみな真剣に悩んでおり、経営は岐路に立たされています。

都会に住む方々にとってはあまりピンとこないかもしれませんが、会津をはじめ各地方にとって、運転代行は重要インフラ、生活インフラなのです。街の電車の本数もタクシーの台数も限られる地方にとっては、欠かせぬ移動手段。飲食店とは切っても切れない関係にあり、代行業者がいるからこそみな安心してお酒が飲める。「飲食店と運転代行業者は一体」。そう思って30年、営業を続けてきました。
「あって助かった」の声に安堵
弊社の場合、料金は初乗りで1200円、3kmで1700円。タクシーに比べても良心的な設定になっていると思います。会津若松市の中心部には居酒屋やスナックなどが500店ほどあり、私が事業を始めたのは、夜はこの街で楽しく飲んでもらいつつ、飲酒運転による事故をこの世からなくしたいという思いからでした。利用する人は官公庁に勤務する人、学校の先生なども多かったですね。
最盛期には車の保有台数は10台以上あり、従業員も20人ほど抱えていました。年商も6000万円ほど。コロナ禍の前までは、地方都市といえども夜は活気があり、弊社の待合場所も夜遅くなると多くの人で埋まっていました。「車の順番待ちの間、もう一杯」。そんなお客さんもいらっしゃいました。
肩書は代表でも私も運転手の一人なので、代行を使ってくれる方から「あって良かった、助かった」と声をかけられるとほっとしましたし、運転席で身の上話を聞いていると、私までまるでその前の会合に参加していたかのような楽しい気持ちになれました。この会津の街で過ごした人々とたくさんの話題を共有できること。これがこの仕事を続けてきた一番の理由です。
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