昨年10〜11月にかけ、地元ブランド米「仁井田米」で不祥事が発覚した。販売業者の一つであるJA高知県が産地や年度の表記を偽り、販売量を増やしていた。地域の責任者として、特産品のイメージダウンに「残念でならない」と唇をかむ。

[四万十町長]
中尾博憲氏
1954年高知県生まれ。73年に窪川町役場に入庁。2008年、窪川町が06年に近隣町村と合併した四万十町農林水産課長となり、09年に町役場を退職。14年の町長選挙に出馬して当選、18年には再選を果たした。

 昨年10月、JA高知県で「仁井田米」が不適切に販売されていたことが判明しました。仁井田米は高知県四万十町の窪川地区で栽培する、我が町を代表する特産品で、地域の皆さんが長い時間をかけて築いてきた地域のブランドです。そのイメージが、一販売業者の安易な考えによって大きく傷つきました。農家をはじめ、町全体の事業に後ろ向きの影響を与える「事件」であり、残念でなりません。

 四万十町はここ数年、「地産外商」の方針を掲げ、コメや畜産品、うなぎ、地域の加工品などの、高知県内・県外への出荷を増やしてきました。特に、「食味が良い」と評判が高い仁井田米はエース的な存在で、ホテルやレストランなどへの独自の流通ルートができています。

 今回、町の商品を扱っていただいている皆様、ご検討いただいている方々に多大なご不安とご迷惑を与えてしまいました。行政の長として深くおわびするとともに、今後の信頼回復に努めたいと考えております。

ここ数年「地産外商」の方針を掲げ、コメや豚肉など特産品の高知県内・県外への出荷を増やしている高知県四万十町。不正の影響を最小限に抑えるべく、町総出で信頼回復に臨む

特別米に通常のコメを混ぜる

 不正の発覚は農林水産省の立ち入り調査によるものでした。不適切な事案は3つあり、まず、低農薬の「特別栽培米」として販売しているコメに通常栽培のコメを混ぜて販売していました。

 さらに、隣町のコメを故意に混ぜる、別ブランドのコメを偽表示して販売する、といったことも起こっていました。

 不正に関与した担当者は「農家の所得増大への思いが強すぎた」などと弁明していたようですが、理由がどうあれ、消費者に対する裏切り行為です。

 JA高知県は仁井田米の収穫量の半分ほどを扱っている業者であり、普及活動を一緒にしてきたパートナーでした。そういう意味でもショックで、彼らへの信頼が揺らいだのは否めません。

 強調しておきたいのは、仁井田米=JA高知県のコメ、というわけではないということです。

 農家の皆さんが作ったコメは、米組合に所属する米穀販売店が買い上げてそれぞれが販売したり、農家が直接小売りしたりしています。JA高知県もその販売業者の一つにすぎません。それでも不祥事を受けて、他の関係者の皆さんも顧客先を行脚し、我々も頭を下げて回りました。

 その最中だった11月、JA高知県において新たな不正が見つかりました。今度は、2020年産と表記して販売していたコメに、19年産の古米を混ぜていたことが分かりました。

 10月末には、地元でコメに関する毎年恒例のイベントがあり、地域は「今は厳しい時だが力を合わせてやっていこう」と話し合っていました。気持ちを切り替えて臨もうとしていた中での、2度目の裏切りでした。

 度重なってこのようなことが起こると、商売をする上で最も重要な信頼がなくなってしまいます。もはや職員の出来心でやったというレベルの話ではなく、組織、管理の重大な問題です。

続きを読む 2/2 課題を認識する契機にする
日経ビジネス2021年2月15日号 82~83ページより目次

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