新型コロナウイルス感染症の拡大は、すし業界も窮地に陥れている。2020年は倒産が増え、負債総額は12年ぶりに40億円を超えた。コロナが収束しない中、どうしのぐか。忍耐の一年が始まった。

山縣 正氏
昨春から広がった新型コロナウイルス感染症は、全国のすし店の経営を直撃しています。特に、盛り場や観光地に店舗を構えているところは散々です。住宅地やベッドタウンでそれなりに潤っているところもあると聞きますが、おしなべて見るとかなり深刻な状況です。
私は東京の日本橋で「都寿司」というすし店を経営し、全国最大のすし職人組合「全国すし商生活衛生同業組合連合会(全すし連)」の会長を務めています。東京の地域組合の理事長もしており、月に1度、アンケートを実施しているのですが、まあ、ひどいものですよ。昨年9月から11月の売り上げは平均で前年比3〜5割減の水準でした。
1割減で苦しくなる商売
すし店のコスト構造は一般的に、ネタなどの原価の割合がほぼ半分です。そこに人件費や光熱費、家賃などが乗ります。売り上げが前年比で1割も減ると、もうからなくなって経費を削減する。そんな商売です。3~5割も減ってしまえば話になりません。
今のところ、コロナで廃業したのは、大規模展開している店が多い。2020年5月ごろには、幅広く事業をされていた「寿し常」さんの経営が持たなくなったことが話題になりました。大勢の人を使い、固定費が大きいところは、資金繰りが苦しくなっています。逆に、家族など小規模でやっている店は、20年の間は何とか続けていけるところが多かったように思います。
すし職人は高齢化が進んでいますので、19年以前にも店を畳むところはそれなりにありました。我々は「ぜいたく廃業」と呼んでいましたが、ある程度のお金がたまったので隠居するといった自然廃業ですね。コロナ禍によってお客さんの数が急減したことが、この流れに輪をかけました。
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