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手編み草履で9割超のシェアを占めながら、厳しい経営環境に陥っている。新型コロナウイルス感染拡大で、売り上げの半分以上を占める祭り用草履の注文が途絶えた。雇用調整助成金の特例措置継続など、伝統産業を絶やさないための支援を求めている。

[軽部草履社長]
軽部陽介氏
1979年、山形県寒河江市生まれ。高校卒業後、軽部草履に入社。同社専務を経て、2020年5月に現在は会長を務める父から事業を引き継いで社長に就任した。軽部草履の年商は近年1億円前後だった。

 新型コロナウイルスの影響で全国各地の祭りの中止が相次いだことで、手編み草履の生産・販売を手掛ける私たち「軽部草履」(山形県寒河江市)にとって厳しい状況が続いています。

 春先に止まった注文は、一向に回復しません。これほど静かな時間は初めてです。「1年なら耐えられる」。そんな思いで過ごしてきましたが、いまだに来年の状況も見通せないまま。どのように事業を続けるのか、不安が募っています。

100年以上の伝統産業

 軽部草履は、家業として生産を始めた祖父の代から数えれば100年以上の歴史があります。農家の多い寒河江周辺は、農作業の落ち着く冬場を中心に、稲わらなどの自然素材で草履を編んで生計を立てていた家が多い地域。どの家にも草履を編める人がいて地域の産業として発展してきました。

 ただ、戦後になりスリッパやサンダルが普及してきて需要が減ってくると、草履の製作をやめる製造業者が相次ぎました。今では会社の形で草履を手掛けているのは私たちのみで、個人商店のような形でほかに3軒程度存在するだけです。

 ビニール製で、機械で作る草履であれば他県でも生産しています。が、天然素材を使った手編みの草履は現在、私たちが国内シェアの95%ほどを占めています。

手編み草履で国内シェア9割超の軽部草履では、20人以上の職人らが手作業で草履の生産に当たっている。

 材料の稲わらも10アールほどの土地で草履用品種を栽培しています。150cmほどまで背丈を伸ばし、稲刈りもしています。