新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2020年は海の家の設置を断念した。毎年50万人以上が訪れるが、鎌倉市の海水浴場の不設置を受けて断念せざるを得なかった。21年は開設を前提にした安全対策の策定を県などに求めている。

[由比ガ浜茶亭組合組合長]
増田元秀氏
1961年鎌倉市生まれ。広告代理店経営などを経て、現在はイベントの企画・制作と「海の家」の経営を手掛ける。2005年から由比ガ浜茶亭組合の組合長。鎌倉市海浜組合連合会代表なども兼務。

 私が組合長を務める「由比ガ浜茶亭組合」を含め、神奈川県の「海の家」は2020年夏、一斉に営業を断念しました。県の示した新型コロナウイルス対策のためのガイドラインに対し、海水浴場の開設者である自治体などが「順守することが難しい」と判断したためです。

 経済活動を停止して収入が途絶えることは厳しいですし、私たちが貢献してきた海水浴場の秩序や安全の確保への懸念もあり、苦渋の決断でした。

 約800mの由比ガ浜は「誰もが安心して楽しめるビーチリゾート」を目指して、水質や環境への対策や教育活動が評価される国際環境認証「ブルーフラッグ」を16年から取得しているほか、車椅子の人も利用できるよう砂浜に「ボードウオーク」を設置してバリアフリー化も進めています。

 大音量で音楽を流して若者が踊る「クラブ化」が問題になったことも過去にはありましたが、警備会社と契約するなど、安全対策も進めていました。

毎年50万人以上の海水浴客

<span class="fontBold">例年、多くの海水浴客でにぎわう由比ガ浜</span>
例年、多くの海水浴客でにぎわう由比ガ浜

 食事や飲み物を提供する「海の家」は20軒ほど営業しており、組合員は30人弱程度。大規模な施設は1シーズンで1億円ほど売り上げます。ここ数年は、夏に50万~110万人ほどの海水浴客が訪れていました。

 海水浴場や海の家の開設にはそれぞれ手続きが必要です。由比ガ浜の場合、海水浴場を開設するのは鎌倉市で、市が県に開設の手続きをします。

 一方、私たち海の家の事業者は海水浴場の開設を受けて、海岸法に基づき、土地を管理する神奈川県に対して組合として「占用料」を支払っています。由比ガ浜茶亭組合の場合は海の家の建設開始から解体までの6~9月半ばの約3カ月半で計1000万円ほどです。

 このように、営業するには県や市と連携する必要があるため、私は「神奈川県海水浴場組合連合会」の副会長や、「鎌倉市海浜組合連合会」の代表としても、今夏の海水浴場の運営について、自治体と交渉を重ねてきました。

 新型コロナの感染が拡大していた4月の時点で、県連としては「コロナ禍においても、海水浴場や海の家を開設する方向で進めていく」との会長声明を各組合に出していました。それを受け組合間で連携しながら、感染拡大防止に向けて手洗いや消毒の励行などを盛り込んだ独自のガイドラインを作成して、県には5月に提出していました。

 ところが、5月下旬に県が開設者や海の家事業者向けにガイドラインを示してきたことで風向きが変わりました。

 ガイドラインの内容は「砂浜に一定の間隔で目印の設置を行う」ことなどを海水浴場の開設者である自治体などに求めており、実現し難いだろうというものでした。

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