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三味線の国内最大メーカー「東京和楽器」が存続の瀬戸際をさまよっている。新型コロナウイルス感染拡大で需要が低迷し、年内の廃業を視野に入れる。募金や寄付など支援を受け事業継続の可能性も出てきたが、経営環境は依然厳しい。

[東京和楽器代表]
大瀧勝弘氏
1939年東京都生まれ、80歳。58年に日本大学第二高等学校を卒業し、父が経営する三味線関連メーカーに就業。兄と立ち上げた「大瀧邦楽器」の専務兼工場長を務め、2002年に三味線専業メーカー「東京和楽器」を設立した。

 会社を畳むことを決めてから4カ月以上がたちます。最初は6月15日に廃業する予定で、5月11日に社員らに話をしました。

 事業を延長したのは、その後、全国の卸売・小売店から駆け込みの注文が入ったからです。三味線は基本的に木と皮でできており、木でつくった構造部を小売店が仕入れ、皮を張って販売するのが一般的です。構造部をつくれる専業メーカーは全国に数社しかなく、大型の工場を持つ我々が廃業すると、小売店が製作を頼むところがなくなってしまいます。それらを仕上げるため、年内をもって仕事を終えようと考え直しました。

 最近になって、ありがたいことに資金面で2件、大きな後押しも頂きました。まず、ある和楽器バンドが当社のためにライブで募金を集め、寄付金も含めて800万円を支援してくれたことです。さらに、月60万円ほどかかっていた工場などの賃料を、大家さんのご厚意によって無料にしてもらうことができました。このような状況での経済的支援は非常にありがたく、空から降りてきたクモの糸のようにも思えます。

それでも厳しい三味線市場

 ただ、それでも、経営環境が厳しいことは変わりません。

 新型コロナウイルスの感染が拡大する以前の当社の1カ月の売上高は800万円ほどでした。消費増税があった昨年10月以降に経営が厳しくなり、毎月100万円ほどの赤字が出ていました。今は、新型コロナウイルスの影響で新品の需要が低迷しており、事業環境はさらに厳しくなっています。