東京地裁は2月、JASRACが音楽教室から著作権使用料を徴収することを認めた。音楽教室側は判決に納得いかないとして、知的財産高裁に控訴している。音楽教育を守る会は「大きな視野で、音楽文化の発展を考えるべきだ」と訴える。

[音楽教育を守る会会長]
大池 真人 氏
1960年生まれ。82年慶応義塾大学経済学部卒、日本楽器製造(現ヤマハ)入社。2016年に取締役常務執行役員。17年6月からヤマハ音楽振興会常務理事、19年6月に「音楽教育を守る会」の会長に就任。

 東京地裁は2月、日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽教室事業者から著作権使用料を徴収することを認める判決を出しました。ヤマハ音楽振興会など364の音楽教室でつくる「音楽教育を守る会」の主張が認められなかったことについては、「驚いた」というのが素直な感想です。

 JASRACからヤマハ音楽振興会側に「音楽教室からも使用料を徴収したい」という話が出たのは2003年でした。再び使用料を求めてきたのが14年です。16年には河合楽器製作所など他の音楽教室にも打診をしていることが分かり、業界としてJASRACに対応するために「音楽教育を守る会」を17年に立ち上げ、同年に提訴しました。

 今回の地裁判決は「カラオケでの音楽利用」に関する1988年の最高裁判決で構築した法理論(カラオケ法理)をそのまま当てはめた「結論ありき」の判断だったと感じています。

 争点となった著作権法22条には「著作者は公衆に聞かせることを目的として演奏する権利を専有する」とあります。一般的なレッスン形態である先生と生徒の1対1、あるいは生徒5人程度のグループレッスンが、「公衆」とは一般的な感覚からはとても思えません。

レッスンの演奏は「未完成」

<span class="fontBold">音楽教育を守る会の大池真人会長(左)らは3月、2月末の東京地裁の判決を不服として知財高裁に控訴し、記者会見を開いた</span>
音楽教育を守る会の大池真人会長(左)らは3月、2月末の東京地裁の判決を不服として知財高裁に控訴し、記者会見を開いた

 また、レッスンでの練習や指導の演奏が「聞かせる」ための演奏なのかという点についても理解し難く感じます。音楽教室で演奏される音楽は完成に近づけるための「未完成の状態」です。一方、カラオケやダンス教室では「完成された状態」の音楽を流すわけですから前提が全く異なります。

 一方、レッスンでの使用を前提としているはずのレッスン用の教材・テキストに含まれる楽譜は購入時にその使用料は支払っています。さらにレッスンの成果を披露する発表会でも使用料を支払っており、全体としては適切な負担をしていると考えています。

 現行の著作権法が制定された70年、すでにヤマハ音楽教室だけで全国に約30万人以上の生徒がいました。全国津々浦々に民間音楽教室は広く存在し認識されていました。そして、先生が見本を示して生徒が弾くというレッスンの基本形は当時も今もほとんど変わっていません。

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