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JR(新幹線)広島駅前の北側一帯で進む大規模再開発で、計画に誤算が生じている。区画の一部を落札したIKEA(イケア)が店舗開発に着手せず、時間貸し駐車場となっているのだ。行政、事業者と連携してまちづくりに励んでいる地元の町内会は「何とかしてほしい」と訴える。

[広島市尾長地区連合町内会会長]
山城政之 氏
1937年、広島市生まれ。広島修道大学短期大学部を卒業し、広島信用金庫に入社。独立して干しシイタケを扱う乾物屋を経営した後、広島県内の特定郵便局長に就いた。65歳で定年後に西愛宕町内会会長に着任。2006年から現職。

 私は広島駅北口(新幹線口)の近隣一帯をカバーする「尾長地区連合町内会」の会長を2000年代半ばから務めています。連合町内会の区域内では、以前国有地だった約7万m2やJR西日本所有地などを含めた計約13万m2の「二葉の里地区」において、大規模な再開発事業が進められてきました。

 ところが、本プロジェクトの重要な部分で大幅な遅れが発生しています。再開発向けに売却された土地のうち、約1万9000m2の土地がいまだ手付かずで、時間貸しの駐車場となっているのです。この区画を落札し、所有しているのは、スウェーデンの家具専門店、IKEA(イケア)です。

 地元として、中国地方で初めてのイケア店舗が広島にできることには大歓迎でした。広島県内のみならず広域から足を運んでもらえる期待感があっただけに、現状は非常に残念です。イケアの進出を楽しみにされていた消費者の方や、それを見込んで再開発プロジェクトへの参加を決めた企業の方も同じような気持ちだと思います。

地域期待の再開発計画

 二葉の里地区は広島駅に隣接した資産価値の高い場所で、広島の都市再生のエンジンとして期待がかかっている地域です。そのため、13年に財務省中国財務局が売却手続きに入る以前から、行政、地域が連携し、まちづくりに向けた協議を深めてきました。

 広島の繁華街や飲食店街は、広島駅の南側に集中しています。プロ野球の広島カープの本拠地、マツダスタジアムや原爆ドームなど集客施設も広島駅の南口にあります。一方、北側は江戸時代に建立された広島東照宮など神社仏閣が点在しているのですが、従来、人の行き交いの少ない地域でした。

 二葉の里地区には戦時中、日本陸軍の施設がありました。戦後は国有地となり、旧国鉄が事務所や官舎などとして利用していました。ただ、05年に国に返還されて以降は未利用地となり、売却に至ったのが経緯です。

 尾長地区連合町内会は二葉の里地区を含めた19の町内会で構成されています。江戸時代からの町、戦後にできた町、平成・令和にかけて進化する町が混在しており、一体化することが地元の悲願でした。そこで、一帯を「エキキタ」と名づけ、「歴史文化・にぎわい・生活の交差点」として、一致団結して再開発に取り組むことになったのです。

 実際、イケアの敷地を除けば計画に大きな支障はなく、建物が次々と完成し、新たな街が形成されています。広島テレビ放送、総合スーパーのイズミといった地域を代表する企業が本社を置き、飲食店やホテルも増えてきました。医師会や歯科医師会が事務所を構えており、広島がん高精度放射線治療センターやJR広島病院が連なる医療拠点でもあります。

 既に、商工会、町内会、事業者、行政などによる「エキキタまちづくり会議」を組織しています。「自分たちで考え、自分たちで稼ぎ、自分たちで守る」という考えで15年に設立し、参加団体は当初の14から26に増えました。