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10月1日、事業用のごみ袋の大幅値上げに踏み切った。10枚入りで935円。従来の162円と比べると、引き上げ幅は5.7倍に相当する。利用する企業側には不満も残るが、「市としてこれ以上、痛みを先送りできなかった」と語る。

[福岡県糸島市市民部長]
末松隆明 氏

1960年生まれ。山口大学卒業後、福岡県前原市(現糸島市)へ。地域振興課長、総務課長などを経て2017年4月から現職。糸島市は前原市、二丈町、志摩町が合併して10年に誕生。20年に市制10年を迎える。

SUMMARY

事業用ごみ袋値上げの概要

福岡市の西隣に位置する糸島市は、2019年10月1日の消費増税のタイミングに合わせ、事業用ごみ袋の料金を引き上げた。10枚入りで162円だったのを、5.7倍の935円にした。ごみ処理費用に必要な市財政からの負担額を削減するのが狙いで、これまでに例がない措置だ。家庭用のごみ袋は10月、消費増税分のみを転嫁するにとどめた。

 10月1日から糸島市の事業用ごみ袋の料金を引き上げました。改定前は約100リットル用のごみ袋10枚入りで162円でしたが、今回これを935円にしました。引き上げ幅は773円、約5.7倍です。利用者である糸島市内の企業から不安や不満の声が上がったのは事実です。ただ値上げには「これまで安すぎた料金の是正」という側面もあります。以下、経緯を説明します。

ごみ処理で毎年1.3億円の赤字

料金は最大5.7倍、小さめの袋も新設
●糸島市の事業用ごみ袋の改定内容
糸島市は10月から、事業用ごみ袋の料金(100リットル分10枚入り)を773円引き上げた。末松市民部長は本来、1市2町の合併の際に「安すぎる袋の料金の適正化に動くべきだった」と話している

 値上げの背景にはまず、ごみの量と自治体の費用負担という問題がありました。糸島市は前原市と、二丈・志摩町が合併して誕生し、人口も事業者数も増えました。一方、年5400トンに及ぶごみが事業所から出されており、この量も10年で2割弱増えています。

 糸島市内には焼却施設(クリーンセンター)があり、ごみ処理にかかる費用は事業所向けだけで年間1億5000万円ほど。ところが、ごみ袋による収入は約2000万円にとどまります。その差額の1億3000万円分は市の拠出、つまり、税負担です。さすがにこれは重く、会計上の実質赤字を意味します。しかも1年限りのものではありませんので、糸島市誕生から10年間、赤字が積もりに積もっていたのです。

 無論、処理費用をすべてごみ袋代に転嫁するわけにはいきませんが、明らかに収入と支出の差が大きい。「受益者負担の原則」に基づいて、料金を是正する必要があるのではないか。これが議論の出発点でした。