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10月の台風19号の豪雨被害で千曲川の堤防が決壊し、長野市内のリンゴ産地が水没した。衛生面の安全が担保できないため、地元JAでは浸水したリンゴの出荷を取りやめた。自宅やリンゴ畑、農機具、軽トラック──。農家の浸水被害は深刻で、これを機にした廃業も懸念される。

[ながの農業協同組合ながの営農センター長]
宮本健一氏

1971年長野県生まれ。92年にながの農業協同組合に入る。果樹指導員として、低木を密植して生産性を上げるリンゴの「新わい化栽培」の導入に取り組むなどしてきた。ながの営農センター副センター長を経て、19年から現職。

SUMMARY

リンゴ産地が浸水被害の概要

10月12日に上陸し、東北地方や関東地方を中心に甚大な被害をもたらした台風19号。長野市では千曲川の堤防が決壊し、リンゴ産地として知られる長沼エリアが水没した。冠水したリンゴはジュースのような加工品にもできず、無事だったリンゴも水が引いた後に舞った砂ぼこりで駄目になった。被害をきっかけに廃業する農家が相次ぐことも心配されている。

 10月の台風19号の豪雨災害で千曲川の堤防が決壊し、管轄するエリアが大規模に浸水しました。ここは全国2位の出荷量を誇る長野県内でも有数のリンゴ産地ですが、流れ込んだ泥水に漬かったり、水が引いた後に舞った砂ぼこりにまみれたりしたため、今季は出荷を断念しました。

 衛生面の安全を担保できない以上、やむを得ないと判断しました。農業被害の判明後、「被害を受けたリンゴを買い取りたい」という電話も多数寄せられましたが、全て事情を説明してお断りしています。

 ボランティアの協力を得て、果樹園や農道から土砂を撤去するなど復旧を進めていますが、被害は広範囲に及んでいます。積もった泥や漂着した災害ゴミの量も尋常ではありません。来春からリンゴ栽培を再開できるかどうか。はっきりとした見通しを現時点では持てないでいます。また、今回の台風被害をきっかけに、高齢の生産者を中心に廃業が相次ぐのではないかと懸念しています。

 ながの営農センターは長野市内の千曲川流域の農家を対象に、収穫した農産物の販売や、必要な農業資材の購買、営農指導などを手掛けています。台風19号ではわれわれの施設も被災しました。農産物の直売所やライスセンター、果樹共選所が1.5m浸水。ライスセンターにあったコメ300トンも水に漬かって駄目になってしまいました。

 管轄エリアの中で、特に被害が大きかったのが市北部に位置する長沼エリアです。古くからのリンゴの産地で、リンゴ畑や直売所が沿道に並ぶ様子から「アップルライン」と呼ばれて親しまれてきましたが、千曲川の決壊でエリアが丸ごと水没しました。果樹園の冠水面積は市全体では183.9ヘクタールでしたが、このうち約75%を長沼エリアの被害が占めます。