大手運送会社下請けだった西部運輸グループの関東西部運輸が4月、事業許可取り消し処分を受けた。同社は再三にわたって労働時間の超過などで処分を受けてきたが、十分な改善をできなかった。労働環境の見直しに取り組み、信頼回復を目指す。

[西部運輸グループ社長]
田口 哲士氏

1968年、広島県生まれ。国士舘大学工学部卒業。工業薬品の専門商社で営業を担当した後、96年、父が社長を務め、西部運輸グループの一社である関東西部運輸に入社。2015年に西部運輸社長。16年関東西部運輸社長に就任。

SUMMARY

事業許可取り消しの概要

関東西部運輸と田口社長が2017年に2度にわたり労働基準監督署に従業員の長時間労働で書類送検されて以降、関東運輸局なども同社に立ち入り検査を実施。18年7月と12月に営業所の事業停止などの処分を受けた。その後の監査でも違反が見られたため違反点数の累積で許可取り消しになった。大手運送会社の下請けを担っていた。

 西部運輸(広島県福山市)グループの関東西部運輸(千葉県野田市)は4月8日、国土交通省の関東運輸局から貨物自動車運送事業法に基づく事業許可取り消し処分を受けました。運転手の1回の運行での拘束時間が16時間の上限を超えていたことなどが理由です。

 労働基準法違反の疑いで会社と私が書類送検された2017年以降、労働環境の改善を進めてきました。しかし、19年1月の運輸局による監査でも改善が足りない部分があったために貨物自動車運送事業法での違反点数が累積し、結果的に取り消し処分となりました。改善に時間がかかっていた部分があったということで、取引先や従業員に対して申し訳なく思います。

 野田市の本社は従業員の雇用を守るため、取り消し処分の下る約1週間前の4月1日から、グループ会社の九州西部運輸の千葉支店として許可を得て運送事業を行っています。また、関東西部の支店だった栃木・川口・新潟各店は東北西部、茨城・船橋・神奈川・埼玉は東海西部の支店として今後、運送事業の再開をそれぞれ計画しています。いずれも長距離でなく地場および近距離路線だけを担う考えです。それにより長時間拘束をなるべく避け、働きやすい環境整備を進めていく考えです。

強みの「特積み」で長時間化

 関東西部は本社含め8営業所を設け、ピークだった16年の年商で約120億円、車両430台、従業員約450人を抱えていました。グループで西部運輸に次ぐ規模で、関東~関西・中国路線を中心に九州路線も含め大手運送会社などの下請けとして幹線輸送を手掛けていました。売り上げの8割ほどが貨物を積み合わせて運送する特別積み合せ貨物運送(特積み)でした。

 特積みを手掛ける会社が限られていたこともあり、ドライバーの質の高さも評価され売り上げを伸ばしました。特積みは同じ路線・時間帯で定期運行するので、出発時間や運行先がその都度異なる貸し切り運行に比べ、運転手が働きやすいという利点もありました。

 ただ、運輸局に問題視された違反のうちの一つである長時間の勤務時間という点でいえば、特積みは出発時の荷積みに3~4時間、場合によっては6時間ほどかかることもある労力のかかる仕事でした。大型トラック1台に載せる10トン分もの荷物を手作業で載せていけばどうしても時間はかかりますし、取引先の集荷が遅れていれば、終わるまで出発を待つこともありました。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1487文字 / 全文2895文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「敗軍の将、兵を語る」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。