国が5年に1度実施する住宅に関する調査で、山梨県が空き家率全国1位となった。 過去3回連続でトップだった山梨県は様々な対策を重ねてきたが、返上はならなかった。 別荘の流通を活性化させるなど取り組みを進め、次回調査までの状況の改善を目指す。

[山梨県宅地建物取引業協会会長]
長田 満氏

1955年山梨県生まれ。日本大学生産工学部を卒業後、山梨県内の建設会社に入社。住宅不動産会社勤務を経て、86年に不動産関連の長田興産を創業した。同社では93年から代表取締役。2018年、山梨県宅建協会会長に就任。

SUMMARY

空き家率日本一の概要

国が実施する住宅に関する調査で、山梨県が空き家率で日本一となった。山梨県のトップは2003年の調査から4回連続。同県の不動産会社の集まりである宅建協会が窓口となり、行政と民間を連携させる取り組みを進めているが、改善はならなかった。宅建協会は市町村と協定を結ぶなどして県内の空き家の把握に努めており、住宅の流通促進を図っている。

 2018年の「住宅・土地統計調査」において、山梨県は都道府県別の空き家率で、13年の前回調査に引き続いて1位となりました。官民が連携して様々な対策を取っていますが、いまだ高い水準から脱せずにいるのが実情です。なぜ山梨県に空き家が多いのか、そして我々がどのように対応しているかを、説明していきたいと思います。

 まず、空き家の背景にあるのは人口減少です。山梨県の人口は今年9月時点で81万人と最近20年で1割ほど減りました。若者が県外に転出する理由の一つが「就職」です。山梨県は第2次産業の割合が高い地域ですが、近年、域内の製造業の雇用は減少傾向にあります。強い産業を保持できないことが定住者減を招いています。

若い世代の流出防げず

 県中心部からは東京都心まで電車でも車でも2時間以内で移動できます。交通利便性が高いということは、動きやすいことでもあります。山間地が多く、新興の住宅地が造成され難かった山梨県は関東圏にあるにもかかわらず、若い家族を受け入れる環境を十分につくれませんでした。仕事を求める人は東京方面に移住し、少子化と核家族化が、この流れを後押ししました。

 人が減る一方で、県内の地方部などでは、住宅の再利用も進みませんでした。先祖代々の不動産を手放しにくいのは全国共通でしょうが、山梨県には兼業農家が多くあります。田んぼは売却に対して厳しい規制がかかっており、住宅だけを流通させるわけにもいきません。結局、誰も住んでいなくても保持しているケースが多いのです。

 加えて、別荘地の存在も空き家増加の一因となっています。山梨県には富士五湖、八ケ岳といった景勝地があり、その周辺に別荘が1万8000軒ほど建っています。こうした別荘など二次的住宅を除いた空き家率では全国6位です。それでも高い水準には変わりませんが、1位というのは「休日を楽しむ家」も含めた数字なのです。

 とはいえ、空き家対策は喫緊の課題です。空き家は治安や景観に悪影響を与え、地域の活性化を妨げます。山梨県宅建協会は行政側の協力を受け、対策の主体的な役割を果たしています。山梨県は全国でも移住希望者が多い地域です。週末を地方で暮らす「デュアルライフ」を志向する人も増えており、その掘り起こしにも励んでいます。

 取り組みの一つが、空き家の所有者と利用したい人をマッチングする「空き家バンク」です。宅建協会は山梨市や富士吉田市、南アルプス市など20市町村と協定を締結しており、協会ホームページから市町村の開示する不動産賃貸・売買情報につなげる仕組みです。

 空き家バンクを軸とした市町村同士の意見交換会も実施しています。各市町村の住宅課など関係部署の人に集まってもらい、アイデアや対策を共有するのです。潜在的に移住を希望する人はいるのですから、情報を地域内に停滞させないことが重要なのです。

 不動産を持っている人向けに、資産を活用するためのセミナーと相談会も都度、開催しています。セミナーには弁護士や行政書士、建築士にも参加してもらっています。一部の市町村では、固定資産税の納付情報を活用し、空き家になりそうな不動産の所有者に担当者が情報提供してくれているそうです。

 18年からは県と連携し、既存住宅の健全性を調査する「インスペクション」の補助も始めました。上限を5万円として費用の半分を県に負担してもらい、中古住宅の流通を活性化させる狙いです。18年4〜9月の空き家バンクの取引実績では、協定を結ぶ市町村(当時は19市町村)で70軒が成約しました。

次ページ 「若者」と「県外者」巻き込む