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開業30年の節目の年に、重大な人身事故が起きた。自動運転の車両が突如逆走して車止めに衝突、17人が重軽傷を負った。信頼を回復するには、日々の安全運行という原点に戻るしかないと話す。

[横浜シーサイドライン社長]
三上章彦氏

1957年生まれ。明治大学卒、横浜市へ。主に健康福祉や子育て支援部局に在籍し、横浜市中区長を経て2017年6月から現職。新杉田~金沢八景を結ぶシーサイドラインは1989年に営業運転を始め、今年は開業30年の節目の年だった。

SUMMARY

自動運転車両逆走事故の概要

6月1日午後8時15分ごろ、シーサイドラインの新杉田駅(横浜市磯子区)で、同駅発の無人運転車両が突如、逆走。25mほど逆走して駅構内の車止めに衝突、乗客17人が重軽傷を負った。車両の内部装置の断線により、モーターに進行方向が正確に伝わらなかった。断線の直接的な原因は分かっておらず、国の運輸安全委員会による調査が続いている。

 6月1日午後8時15分ごろ、新杉田発並木中央行きの車両が突如、逆走しました。前に進むべきところを後退し、25mほど離れた車止めに衝突しました。重軽傷のお客様は17人に上ります。開業30年の節目の年に、初めて人身事故を起こしました。私たちへの信頼は地に落ち、もはやゼロになったと考えています。以下、経緯を説明します。

「こんな列車乗らない」

 横浜市の新交通システム「シーサイドライン」は1989年の開業当時はワンマン運転でしたが、以降、20年以上にわたり自動運転(無人運転)を続けています。自宅にいた私への事故の一報、「無人運転車両が逆走した」という現実は正直、イメージさえできませんでした。6月2日の深夜0時過ぎに最初の記者会見をしましたが、把握できている範囲内での状況説明になりました。

 2日以降、横浜市内の病院や被害者の自宅などを回り、一軒一軒、おわびしました。やり取りの中で厳しい言葉も頂きました。何を言われても誠意をもって丁寧に対応しなければならないと考え、治療費や会社を休む場合の補償などはすべてこちらでさせていただくと約束しました。

 けがをされたお客様はもちろんですが、路線を日々利用していただいている方々にも多大な迷惑をかけました。シーサイドラインの利用者は約1日5万4000人。2日半ほど車両を動かせず、バスでの代行輸送を実施しましたが、輸送力は全く異なり、バスに乗るために長蛇の列もできました。「いつ元の状態に戻るんだ」「通勤で仕方なく使ってきたが、そうでなければこんな列車には乗らない」。駅の窓口ではこうした厳しい指摘や批判を今なお受けており、社員一同、切り裂かれるような思いを感じています。