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県が独自開発した新品種のイチゴの苗が、デビュー直後に不正流出した。栽培許可のない農家に苗を持ち出したのは、県の元職員だった。地元産の農産物ブランドを守っていくため、再発防止を強く誓う。

[佐賀県農林水産部長]
池田 宏昭氏

農産課長、農政企画課長などを経て2019年4月から現職。佐賀県はイチゴをはじめ園芸作物の産出額(18年度で629億円)を10年後に888億円までに引き上げる目標を掲げる。

SUMMARY

「いちごさん」苗流出の概要

2019年1月下旬、佐賀県内の直売所で新品種「いちごさん」の苗が売られているのが見つかった。調査の結果、県の元職員によって無断で持ち出され、栽培許可を受けていない農家2軒に渡っていたことが判明。県は、農家で増殖され残っていた約300株の苗を処分したものの、実際に販売されていた5株の行方が分かっていない。

 佐賀県が独自開発し、2018年秋にデビューしたイチゴの新品種「いちごさん」の苗が無断で持ち出されていたことが分かりました。連絡を受けたのは19年1月。県内部で調査し、3月に記者会見で発表しました。持ち出したのは、佐賀県農業試験研究センターに勤め、発覚時には退職していた60代の元職員です。新品種デビュー直後の出来事であり、いわゆる「身内」による持ち出しは想定外の事態でした。以下、経緯を説明します。

 佐賀県では「いちご次世代品種緊急開発プロジェクト」と題し、「さがほのか」の後継となる新品種の開発に取り組んできました。プロジェクトには10年度から7年もの歳月をかけました。以前の開発は、県の試験場だけで行っていましたが、開発段階から農家やJAの関係者に入ってもらい、評価を積み上げていく方法に変えています。

 様々な苗を掛け合わせ、トータルで1万5000種類の苗から淘汰・選抜していく気の遠くなるような作業です。開発途中の段階では食べられないイチゴも多くあり、県の担当者の一人は「5万個のイチゴを食べた」と話しています。最終的に残ったのが新品種のいちごさん。多くの関係者の努力の結晶で出来上がった品種だけに、1人の元職員による軽はずみな行為は残念でなりません。関係者の皆様に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

日経ビジネス2019年6月24日号 82~83ページより目次