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行き過ぎた返礼品問題など、全国のふるさと納税が岐路に立たされている。香川県で納税寄付額が最も多かった三木町も国の要請に従い、結果として収入は大きく減る見通しだ。税収増を見込んで計画していた子育て支援施設の建設も一転、中断へとかじを切るしかなかった。

[香川県三木町長]
伊藤良春氏

1953年生まれ。早稲田大学卒業後、百十四銀行に入行。軟式野球の試合中にボールが当たり、左目の視力を失う。通信教育で小中高の教員免許を取得し、三木町の小学校校長を務めた。2018年秋に町長選で初当選し、現在1期目。

SUMMARY

子育て施設の建設中断の概要

香川県三木町は2015年、「まんで願いきいきパーク(仮称)」の整備基本計画を策定。子育ての相談窓口や遊び場などを備えた施設にする想定だった。だが、国による「ふるさと納税」制度の見直しを受け、一転、財源確保の見通しが立たなくなった。伊藤良春町長が事業の予算を削る案を町議会に提案。議会での可決に伴い、事業は事実上、白紙に戻った。

 香川県三木町は、計画していた子育て支援施設の建設を中断することを決めました。2018年12月の議会で私が方針を説明し、19年3月に正式に予算を削ることが了承されました。私の判断に対する戸惑いのほか、「子育て支援を後退させるつもりなのか」といった批判の声があることは承知しています。

 中断の背景には「ふるさと納税」が関係しています。過度な返礼品問題などが連日のように騒がれていますが、三木町でも、姉妹都市の北海道七飯町の毛ガニや地場企業が九州で養殖しているマグロなどをかつて返礼品として扱っていた時期があります。17年度では町の総予算の5%ほどに相当する11億7000万円を集めていました。今回中断を決めた子育て支援施設は、このふるさと納税が増え続けることを前提に町が計画していたものでした。以下、経緯を説明します。

広さ7500m2の特化型施設

 地方創生に関する総合戦略をつくる際、子育て支援に特化した施設を建設したらどうか。そんな構想を打ち出したのは15年のことでした。策定したのは前町長です。「まんで願いきいきパーク」と銘打って、町内の幹線道路に面した7500m2の土地をその建設場所に選びました。親子が室内でも室外でも遊べたり、高齢者との異世代交流を図ったり、子育てに関する相談機能を設けたりと、都会ではこれほど大きいものはないというプロジェクトでした。子育て世帯を中心に三木町への移住人口を増やそう、転入を促そうという狙いもありました。

三木町は子育て支援に特化した大規模施設を想定していたが、工事は中断している(上は施設イメージ)

 医療費無料化などの取り組みと併せ、町に必要な施策だったと思われますが、どうしてもクリアすることができない問題がありました。それは運営コストの問題です。

日経ビジネス2019年6月3日号 92~93ページより目次