全2665文字

令和への改元を前に、「国民総参宮」と記したのぼり旗を市役所に設置。設置団体名などの記載がなく、一部メディアから「政教分離に反するのではないか」との指摘を受けた。「誤解を招きかねない表現」として、のぼり旗を撤去した。

[三重県伊勢市企画調整課長]
辻 浩利氏

1962年三重県生まれ。関西学院大学卒業後、伊勢市役所入庁。市民交流課長、教育総務課長などを経て現職を務める。伊勢市は三重県の中東部に位置し、人口約12万7000人。市内には皇室とゆかりが深い伊勢神宮がある。

SUMMARY

伊勢市のぼり旗撤去の概要

三重県伊勢市が「国民総参宮」と記したのぼり旗を設置団体名などを記載しないまま、2018年12月~19年1月にかけて市役所に設置。一部メディアが「政教分離の原則に反するのではないか」と指摘したことが契機となり、伊勢市は「誤解を招きかねない表現であるとご指摘を受けた」ことを重く受け止めたとして、のぼり旗を撤去した。

伊勢市は定例記者会見で一部メディアから指摘を受けたことをきっかけに、設置していたのぼり旗を1月8日に撤去した

 三重県の伊勢市は2018年12月28日~19年1月8日にかけて、市役所に設置団体名などを記載しないまま、「国民総参宮」と記したのぼり旗を設置していました。しかし、誤解を招きかねない表現との指摘があり、これを重く受け止めて撤去しました。市の担当者として、同じことのないように努めていきます。

団体名のないのぼり旗を設置

 伊勢市には皇室にゆかりの深い伊勢神宮があります。伊勢市、伊勢商工会議所、伊勢小俣町商工会、伊勢市観光協会、伊勢市総連合自治会は18年6月20日、「御大礼奉祝委員会」を設立しました。委員会では設立趣旨について、上皇さまの御退位、天皇陛下の御即位にあたり、伊勢市民として感謝と奉祝の思いを伝えること、としています。

 御大礼奉祝委員会は実質的には、様々な意思決定をする奉祝委員会と同時に、実務を担う実行委員会の二層構造になっています。奉祝委員会は会長が鈴木健一伊勢市長で、委員長を伊勢商工会議所の会頭が務めています。

 市ではこれまでにも商工会議所や観光協会と一緒になって行う取り組みを進めてきました。これまで中心になっていたのは観光課でした。これは取り組みが結果として伊勢市の観光につながっていく、と想定しているためです。これに対して、今回は御大礼奉祝委員会の趣旨から、市としては様々なことを総括している企画調整課が窓口となりました。

 御大礼奉祝委員会の18年度の予算は約382万円となっていました。このうち8割に当たる298万円を伊勢市が支出していました。これについては18年12月一般会計補正予算として議会を通過しています。

 御大礼奉祝委員会の予算のうち、市の支出以外については商工会議所、観光協会などが担っていました。個人の寄付も予算に計上していました。のぼり旗の製作費はここから50万円を支出し、500本を製作することになっていました。

 のぼり旗のデザインや設置場所などについては、実行委員会で決定していました。製作するに当たっては当初、「市民総参宮」と市民が気持ちを表すという方向もありました。それでも市民だけでなくてせっかくですから全国の方にお祝い、感謝の思いを伝えていただくようにしようと、最終的に「国民総参宮」という文言になりました。

日経ビジネス2019年5月27日号 78~79ページより目次