全2987文字

4人を会見に出席させた理由

 帰国した4人は、人の顔はこれほど白くなることがあるのかと思うぐらい、血の気が引いた、虚ろな表情でした。すぐに謝罪会見を開いたのですが、4人を会見に出すか出さないか、最後まで迷いました。しかし、はっきりと本人が事実関係を述べて釈明する方が、彼らの傷を大きくせずに済むと考えました。

 彼らには「隠し事をしない。ごまかさない。人のせいにしない。どんな質問にもきちんと記者の目を見て答えてください」と言い聞かせました。

 買春の時に通訳をしたという日系人の方や、買春現場の写真を撮った記者の方が、公式ジャージーを着ていた彼らに「代表選手がそんなことをしちゃダメだよ」と声をかけてくれさえすれば、と思わないわけではありません。でもそれは言ってはいけないことですし、事実を事実として明らかにしなければ、面白おかしく推測で報道され、事実以上に悪いイメージがついてしまうかもしれないと危惧しました。

 会見では質問を無制限で受け付け、買春の金額などかなり厳しい質問もありましたが、彼らが強く反省していることは分かっていただけたのではないかと思います。

 JBAとしても、今回の問題を大いに反省しなくてはいけません。日本オリンピック委員会(JOC)は「人間力なくして競技力向上なし」と掲げています。その人間力の向上が足りていなかった。

 JBAは国際バスケットボール連盟(FIBA)から男子の強化を課題として指摘されています。競技力にばかり目がいって、人間力の向上は手薄になっていたのだと反省しています。

 スポーツインテグリティ(誠実性、健全性、高潔性)を学ぶ研修を各年代の代表合宿やBリーグの新人研修で実施していました。しかし、問題の4人のうち2人は、大会への出場を優先させてしまったために、研修を受けていなかった。我々は教育の重要性を認識しながら、徹底できていない部分があったのです。

 プロ選手はファンの方々がいるからこそ、ファンにお金を出していただいているからこそ、コートに立てる。お返しをするためにも、ファンサービスを「サービス」ではなく「仕事」として取り組まなければならない。こうしたプロの心構えはこれまでも力を入れて教えてきました。

 加えて、スポーツ選手は様々な人に支えられて活動できていること、だからこそ率先垂範して社会規範を守らなきゃいけないことを強調していく。「誰も見ていなくても赤信号は渡らない」。こんな小さなことから突き詰めて伝えていきます。こうした教育は、この1年、スポーツ界で度々問題になった暴力やパワハラの解決にもつながっていくはずです。

 問題を起こした4人は20代の若手選手でした。華やかなBリーグに迎え入れられ、地道にアマチュアで活動していた時代のバスケ界の苦労をほとんど知りません。ずっとスポーツエリートとして歩んできた。だからこそ、フィジカル、テクニックとは違った部分で足りないところがあったのでしょう。

 彼らは今、駅前や小学校のトイレの清掃など、社会奉仕活動に取り組んでいます。所属クラブのオフィスで事務仕事もしています。最初はクラブが活動内容を指示していたそうですが、徐々に自ら仕事を見つけて取り組むようになってきています。試合でチケットのもぎりをした選手もいました。ファンの前に顔を出すのは非常に勇気のいる行為だったと思います。

 毎月彼ら全員から気持ちをつづったリポートが提出されており「細かな舞台裏の仕事があって、初めて自分たちは試合ができているのだと、感謝の気持ちが湧きました」「1人で部屋の中で鬱々と考えるのではなく、思い切って社会奉仕活動をすることで、自分のやるべきことが少しずつ見えてきました」といった内容が書かれています。彼らは大きな代償を払いましたが、挫折することなく、ひと回り人間として大きくなって戻ってきてほしいと思います。

日経ビジネス2019年1月21日号 84ページより目次