睡眠の質が高まるドリンク、脂肪の燃焼を高めるゼリーなど機能性のある食品が人気を博している。70年以上のノウハウで植物にどんな機能があるかを分析。製品開発の陰の立役者として活躍する。

祖業は被爆者向け医薬品原料の開発・製造
祖業は被爆者向け医薬品原料の開発・製造

 千葉県佐倉市の緑豊かな県道を抜けると、常磐植物化学研究所の工場が見えてくる。5万m2超の広大な敷地には、研究所や抽出精製施設が整然と並んでいる。

 同社はカンゾウやイチョウといった植物から健康に役立つ成分を抽出する技術に強みを持つ。例えばブルーベリーの場合、粉砕した果実から液体を分離し、機能性成分のアントシアニンを特殊な樹脂に吸着させて取り出すといった具合だ。

 抽出物を販売する、いわば機能性食品開発の黒子役であり、メーカーは自社の食品や飲料に常磐植物化学の製品を混ぜれば、機能性を持たせることができる。

 抽出成分の効果を科学的に確かめ、論文化することで競争力を高めてきた同社だが、2000年代後半には債務超過目前という経営危機も経験した。それを立て直したのが現社長の立﨑仁氏だ。

債務超過目前からの再建

 戦後間もない1949年、原子爆弾の後遺症に悩む被爆者を救うために同社は設立された。

 ソバに含まれる成分「ルチン」が原爆後遺症の皮膚出血などの症状を和らげると分かっていたが、ルチンを医薬品向けに大量精製できる会社は当時なかった。そこで国立衛生試験所(現国立医薬品食品衛生研究所)で所長を務めた松尾仁氏と、現社長の祖父の浩氏が中心となって常磐植物化学を立ち上げ、ルチンを抽出・精製する技術を確立したという。

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