ハイテクで伝統食をつくる。食品業界でも指折りのスマート工場を持つ豆腐メーカーが徳島県にある。豆腐を製造する設備はもちろん、AI(人工知能)を導入した自動検品システムまで自前で構築してしまう。高い技術力を強みに商品を進化させ、常温で157日間も保存可能な「紙パックとうふ」を世に送り出した。

徳島県阿南市の工場で生産する「紙パックとうふ」。常温で157日間も保存できる
徳島県阿南市の工場で生産する「紙パックとうふ」。常温で157日間も保存できる

 紙パックが次々とコンベヤーの上を流れていく。その内容物は飲料ではない。常温で157日間も保存できるという「紙パックとうふ」。製造しているのは、2023年に創業50年を迎える豆腐メーカー、さとの雪食品(徳島県鳴門市)だ。年商は100億円超で、地方の食品メーカーとしては大きな規模の会社だといえる。

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 その製造現場は一見の価値がある。21年、同社は徳島県南東部の阿南市の工場で、紙パック豆腐と木綿豆腐の新たな生産ラインを本格稼働した。50億円強を投じて開発した最新鋭の「スマート工場」だ。

機械やシステムを自前開発

 豆腐を自動で製造し、容器に充塡して検品する。驚くべきは、この一連の工程を担う機械やシステムを全て“自前”で開発した点にある。食品メーカーなのになぜ、生産設備の技術を持つのか。それは、四国化工機(徳島県北島町)という機械メーカーのグループ会社であるからだ。

 四国化工機は1961年に創業。乳飲料やヨーグルト、カップ麺、味噌など、多種多様な容器の形状に対応した充塡機を製造してきた。特に牛乳パックでなじみ深い「屋根型」の紙容器に飲料を注ぐ充塡機は、国内7割、海外2割のシェアを誇る。包装資材事業も手掛け、容器やフィルム、蓋の開発、販売を担っている。

AIを使った自動検品システムを導入(左)、豆腐の製造に必要な機械は全て四国化工機グループで自前開発している(右)
AIを使った自動検品システムを導入(左)、豆腐の製造に必要な機械は全て四国化工機グループで自前開発している(右)

 グループ会社の技術力や豆腐製造で培った知見を総動員して、スマート工場は完成した。進化したのは、例えば、紙パック豆腐の封入工程。無菌空間で容器を成型し、豆乳とにがりを即座に密封する技術を実装した。新工場の稼働により、豆腐の生産能力は従来比1.5倍に高まった。

 「本来なら20~30人、従業員を増やさないといけないところを4~5人増で回せている。画期的ですよ、これは」。そう語るのは、さとの雪食品と四国化工機を率いる植田滋社長CEO(最高経営責任者)だ。

徳島県内のスーパーでは特設コーナーで販売
徳島県内のスーパーでは特設コーナーで販売

 味にも妥協しない。豆腐の風味を損なう酸素や光を通さない特殊な紙パックも開発、量産化に成功した。こうして生み出された「ずっとおいしい豆腐」は、発売から1年3カ月で約153万パックを売るヒット商品となった。22年3月には料理向けの姉妹商品「かためのおいしい豆腐」も発売。海外展開にも力を入れる。

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