江戸時代に庶民へ広がり、長く日本の食を支えてきた「豆腐」。だが業界は薄利多売で苦しんでいる。縮小が続く豆腐業界を救うため、トップ企業が自ら変革を起こそうとしている。

豆腐業界を救いたい。豆腐メーカーの破綻・撤退が相次ぐ中で、「1社でも多く救いたい」と鳥越淳司社長は業界の再編に取り組んでいる(写真=柴 仁人)
豆腐業界を救いたい。豆腐メーカーの破綻・撤退が相次ぐ中で、「1社でも多く救いたい」と鳥越淳司社長は業界の再編に取り組んでいる(写真=柴 仁人)

 日本の食卓に欠かせない食材の一つ、「豆腐」。しかし豆腐製造業の営業施設数は1960年度をピークに約9割減少し、2019年度には6000を下回った。さらに昨今の大豆や輸送費の高騰が追い打ちとなり、九州などで地場の豆腐メーカーの上位企業の破綻・事業撤退が続いている。

 豆腐は地域ごとに作り方や味が異なる。このままでは各地域に根付く豆腐の伝統が廃れてしまう──。業界の危機を救うため、豆腐メーカートップの相模屋食料(以下、相模屋)はこの10年、M&A(合併・買収)で業界の再編を推し進めてきた。

 1951年に創業した相模屋は、2002年に鳥越淳司社長が入社して以降、売上高を約11倍に伸ばした。05年には出来たての豆腐に上からパックをかぶせる「ホットパック方式」を開発し、生産効率を通常の4倍以上に高めた。さらに、12年に発売した「機動戦士ガンダム」関連商品の「ザクとうふ」が異例の大ヒットを記録。1日5000丁出荷すればヒットとされる中、初日で14万丁に達した。その後も植物性原料でチーズの食感を実現した「BEYOND TOFU(ビヨンドとうふ)」シリーズなどを生み出し、豆腐業界に変革を起こした。

(写真=柴 仁人)
(写真=柴 仁人)

 業界の“常識”を覆しながらトップに上り詰めた相模屋。だが業界全体は斜陽のまま。鳥越氏は「豆腐業界をいろいろな形で盛り上げたい」と思い、12年に初めてのM&Aに踏み出した。最初に買収した企業は約1年で単月黒字化。約10年で8社を買収・再建し、ある会社は3カ月で単月黒字化に成功するなど、再建スピードは加速している。「相模屋は社名も社員もそのまま残し、再建を最後までやるという評価をもらえている」と鳥越氏は手応えを感じている。

独自の技術にフォーカス

 相模屋の再建の秘訣は2つある。まず安売りをやめて、独自の技術や地域特性にフォーカスすること。

 豆腐業界には、安い豆腐を大量生産して、薄利多売する安売り競争が根付いている。しかし、人口が減少し続けている今日、安売り競争は成立しなくなりつつある。そのため、「独自の技術や地域特性のある商品にフォーカスする必要がある」と鳥越氏は主張する。

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