インターネット通販のサイト作りを支援するビジネスで急成長し、開設されたショップは180万店に及ぶ。ネットの専門知識がなくてもスマートフォン1つで店舗を開ける使いやすさが強みだ。競合が増える中、ビジネス相談会などサポートの充実で顧客をまだまだ開拓できるとみている。
「お菓子屋さんになるのが夢でしたが、実際に店を構えるにはお金がかかりますよね。でもネットなら、可能じゃないかと思って」
さいたま市に住む小出倫子さんは、5月末からネット上で焼き菓子ショップ「パティスリーリエナルク」を運営している。専門学校で菓子作りを学び、洋菓子の製造・販売会社に就職して5年余りたったとき、自分の店を持とうとネットショップ設立を決意した。
販売する菓子のメニューや包装のアイデアを練った後、サイトを開設。利用したのが、サイト構築を支援するサービス「BASE(ベイス)」だ。スマホだけを使い、たった数日で立ち上げた。

月商、億単位の店も
通販サイトは大きく、複数の事業者が出店するモール型と事業者の独自サイトに分けられる。後者のサイトを巡って、その構築や運用を支えるサービスの代表格がBASEだ。2012年、鶴岡裕太CEO(最高経営責任者)が設立し、19年に上場した。
値ごろ感と制作しやすい手軽さを武器に、BASEを使ってサイトを設けたショップの数は20年に100万店を突破、22年6月には180万店に到達した。中には月商が億単位となった店舗もある。
モール型の楽天市場やYahoo!ショッピングは高い集客力を誇るが、費用がかさむ。国内最大規模の楽天市場の場合、一番安いプランでも初期登録費用として6万円かかり、このほかに月1万9500円の出店料、さらにシステム利用料などがかかる。
BASEのスタンダードプランの場合、初期費用や月額費用が不要。売上高に対する6.6%と40円の手数料やシステム利用料となっている。

開設するには、まず登録画面でメールアドレスやパスワードを入力し、サイトのURLを作る。購入者の支払い方法の設定、サイトのデザイン選定、商品名や商品画像の登録などを進める。画像を好きな場所に簡単に置けるなど、技術的な知識がなくても直感的に作れる。

小出さんのように、スマホ1台で自分の店を持つ人も少なくない。出店者の72.7%は1人で店舗を運営している。「商売を始めてみたい」と思ったときに、消費者との接点作りで手間を取らせないところが支持を受けてきた。
母にも挑戦のチャンスを
操作のしやすさは鶴岡氏の創業時からのテーマだ。もともと、BASEを始めたのは小売店を経営する母がネット販売に関心を持ったことがきっかけだった。自力でサイトをつくるには専門知識が必要で、モール型を利用すれば手軽に始められるがコスト負担が重い。「母のようにインターネットに不慣れな人でも、平等に挑戦できるチャンスをつくりたい」との思いからBASEが生まれた。
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