野菜や果物を卸売市場などを通さず小売店で販売する産直売り場が都市部のスーパーで増えている。この流通経路を開拓してきたのが農業総合研究所。創業時からの目標は「豊作貧乏をなくすこと」だ。

 「このトマト、いつのものですか?」「今朝出荷したばかりです」。ここは東京・JR立川駅の構内にある期間限定の野菜の直売所。運営しているのは農業総合研究所で、2週間の出店で約7000人を集客した。同社は2020年10月にJR東日本と資本業務提携を締結しており、両社による試みの一つ。販売した野菜の一部はJR東の列車で輸送している。

[画像のクリックで拡大表示]

 農業総合研究所は全国に93カ所の集荷拠点を持ち、それぞれの地域の農家から集めた野菜を、東京都内や大阪府、和歌山県などのスーパーマーケット内に設けた産直売り場で販売している。21年8月期の流通総額は123億円、売上高は47億円で、右肩上がりで成長してきた。

 会長兼CEO(最高経営責任者)の及川智正氏が起業したのは07年。「豊作貧乏」への疑問がきっかけだ。豊作で農作物が過剰に市場へ出回り、値崩れを起こす現象のことで、農家は普段より多く収穫するため手間はかかるが、利益は減ってしまう。

豊作貧乏をなくす
豊作貧乏をなくす
農家になり、青果店でも働いた経験から、及川会長は「流通を変えなければ農家はいずれいなくなる」と危機感を抱いた(写真=加藤 康)

 及川氏自身も、妻の実家のキュウリ農家で3年間働いて豊作貧乏を実感した。「収入は減り、どこで売られているかも分からずモチベーションが保てない。これでは農家はどんどん少なくなる」(及川氏)と危機感を抱いたという。青果店でも働いたが、「逆に1円でも安く仕入れようと必死になってしまった」。生産者も販売者もつらい。それなら流通に問題があると考え、起業に踏み切った。

産直には付加価値が必要

(写真=加藤 康)
(写真=加藤 康)

 農作物は一般的に、農家から農業協同組合(JA)などが委託や買い取りで集荷し、卸売市場に販売する。豊作時には、小売価格の下落を見越したJAや市場が買い取り価格を下げるため豊作貧乏が生じやすい。

 そこで及川氏は中間流通を省く産直に着目した。和歌山県産のミカンを大阪の百貨店に持っていく販売代行などから始め、スーパーマーケットを中心に、店内に産直売り場を設置する交渉を進めて提携店舗を徐々に拡大。今では全国約1900店舗で展開するまでになった。鮮度の良い産直野菜を買える道の駅と、家から近く日常的に利用できるスーパーの「いいとこどり」が強みだ。