「業務スーパー」創業者が、馬による耕作放棄地の再生と、地熱発電所展開を始めた。2つの事業で食料やエネルギーの自給率アップと収益の両立に取り組む。

耕作放棄地を再生
耕作放棄地を再生
北海道厚岸町の牧場(写真=船戸 俊一)

 北海道の東部、厚岸町の耕作放棄地で大規模な再生事業が進む。カギは馬の放牧だ。放牧中の「北海道和種(どさんこ)」は耕作放棄地に生い茂るさまざまな雑草を食べる。グループ会社の小師馬商を通じてこの事業に取り組むのが、兵庫県加古川市に本社を置く町おこしエネルギーだ。体が大きい海外種と掛け合わせるなど工夫しながら、これまで約400ヘクタールの耕作放棄地を再生した。

 生育したメスは繁殖用に残し、オスは食肉用として出荷する。現在はテスト段階だが、北海道から九州の牧場事業者などにトラックで運ぶ計画が進む。冬場は飼料も与えるものの食べるのは主に雑草なので低コストで食肉用の馬を育成できるという。

 町おこしエネルギーの沼田昭二会長兼社長は「耕作放棄地問題を解決すると同時に、馬肉の生産によって国内の食料自給率の向上に貢献できる。2つの大きな課題に1つの事業で成果を上げる」と話す。

北海道と九州からスタート
北海道と九州からスタート
●主な拠点

 同社は耕作放棄地を買い取りしながら事業化を進める。同じ手法でよみがえった土地は北海道の伊達市や熊本県小国町にもあり、厚岸町の分と合わせると、その面積は1100ヘクタールにもなる。北海道の管理スタッフは「スケールが大きく、本当にそんなことができるのかと思ったが、着実に進んでいる」と話す。後継者不足などで土地の買い取りを希望する声は強く、再生する耕作放棄地を今後も大幅に広げたい考えだ。

地熱発電所にも取り組む

 再生可能エネルギーの地熱発電にも取り組む。耕作放棄地の再生を進める小国町では、2024年春の稼働を目指し第1号の地熱発電所の工事を進めている。地熱発電は太陽光や風力と違い気象条件にかかわらず24時間稼働できる強みがある。第1号の完成後の出力は4.49メガワットで、固定価格買い取り制度(FIT)で九州電力に販売する。

熊本県小国町の地熱発電所(写真=菅 敏一)
熊本県小国町の地熱発電所(写真=菅 敏一)