2025年に高齢者の20%以上が認知症になると予想されているが、根本的な治療法はない。べスプラはスマートフォンを使い、認知症予防に向けた脳の健康維持サービスの普及を目指している。

歩行や食事も管理
歩行や食事も管理
ベスプラのアプリでは、脳 トレによる脳の活性化だ けでなく、認知症予防に 有効とされる歩行や食事 の管理もできる

 「2+2=」「8-9=」。スマホに次々と足し算や引き算の問題が表示される。数問を解き終えると、かかった時間や正答率から「脳年齢」がはじき出される。

 これはIT(情報技術)サービスのベスプラが手掛ける「脳にいいアプリ」。計算問題やパズルで血流を増やすなどして、脳を活性化させる。別のユーザーと対戦する形式をとったり、間違い探しの問題に漫画家・手塚治虫氏の作品「鉄腕アトム」「ブラックジャック」を使ったりと、利用者が続けやすい仕掛けを施している。

 いわゆる「脳トレ」だけのアプリではない。認知症の予防に有効とされる歩行・食事管理もできることが特徴だ。例えば、歩行管理の機能では、全地球測位システム(GPS)で歩くペースを把握し、AI(人工知能)が利用者ごとの目標を設定してくれる。体調不良でペースが落ちれば、AIが適したペースを見つけ出して目標を下げる。食事管理の機能では、豆類や卵など脳を活性化する働きがある9品目の食品を表示し、食べたかどうかを利用者がチェックできる。

 べスプラは2017年にアプリの提供を始めた。現在約10万人が利用しており、「23年には50万人まで増える」と遠山陽介代表取締役CEO(最高経営責任者)は見込む。

祖母が発症、一念発起

 遠山氏はもともと、フリーランスのシステムエンジニアとしてソフトを開発していた。仕事は順調だったが、満たされてはいなかった。心の奥でいつも、認知症を発症した祖母の存在が気になっていた。

 認知症にかかると、脳の萎縮などによって物忘れが進み、日常生活に支障が出る。患者本人はもちろん、家族にも多くの負担がかかる。遠山氏は、認知症予防に役立つようなアプリを自らつくり出すことを思い立った。「システム開発の技術を生かして認知症にかかる人を減らしたい」。12年、べスプラを設立した。

 とはいえ、認知症の専門知識は持ち合わせていない。まずは公開されている関連論文を片っ端から読みあさった。膨大な数がある中で「きちんとエビデンス(証拠、根拠)があるか」を重視しながら、国内外の1000本近くの論文に目を通した。

 認知症が専門の医師による監修も受けながら、どうすれば効果的な仕組みが実現できるか、研究を重ねた。たどり着いたのが「脳トレ」「歩行」「食事」の複合的な管理が予防に有効だということだった。開発開始から約5年たった17年、ようやくアプリが完成した。

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