(写真=竹井 俊晴)
(写真=竹井 俊晴)
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 暖かな陽気を感じ始めた4月初旬の週末。東京・日本橋兜町はいつにないにぎわいを見せていた。

 兜町の最寄り駅、東京メトロ東西線茅場町駅のちょうど真上にある出口から地上に上がると、目の前にそびえたつのは高さ88m、15階建ての高層ビル。天井からつるされた立体的な巨大LEDディスプレーのある1階ロビー部分は、ちょっとした待ち合わせスペースになっていた。

 ビル内のカフェやレストランには若者や家族連れが目立つ。高層ビルから1つ道を挟んだブロックには、ミシュランのビブグルマンを獲得したビストロが入居するビルがあり、さらにその先にはクラフトビールのバーや洋菓子店が立ち並んでいる。数年前の兜町・茅場町エリアにはなかった風景だ。

 そもそも、この街では休日に人が集まることなどまず考えられなかった。街の北側にある東京証券取引所を中心に発展した「金融の街」であるだけに、市場が動いていない土日、祝日はしんと静まりかえっているのが当たり前だったからだ。

(写真=左上・右下:竹井 俊晴、左下:©K5)
(写真=左上・右下:竹井 俊晴、左下:©K5)
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 しかし、その常識は変わろうとしている。「紺色のスーツに染められていた街を、カラフルな色彩に変えていきたい」。こう語るのは、平和不動産の土本清幸社長。兜町の「イメチェン」の仕掛け人でもある。

 日本が好景気だった1980年代のバブル期、兜町には顧客からの注文を取り次ぐために取引所に出入りする「場立ち」と呼ばれる多くの証券マンが街を闊歩していた。最盛期にはその数は約2000人いたという。彼らの胃袋を満たすため、取引所の周囲には多くの飲食店や喫茶店が立ち並んでいた。取引が休みになる昼時、紺色のスーツを着た証券マンが一斉に繰り出す様子は街のにぎわいであり、名物でもあった。

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