この記事は日経ビジネス電子版に『 ファナックも仰天 グローリーが釣銭機工場で発掘したロボットの鉱脈』(1月10日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月28日号に掲載するものです。

貨幣処理機の国内最大手グローリーが、人と共に働く協働ロボットの「活用術」を売り込んでいる。請け負うのはロボットの稼働ノウハウだけでなく、生産システム全体の構築だ。キャッシュレス化をにらみ新事業に育てる。事業誕生の背景には、自社工場での成功体験を宝の持ち腐れにしない貪欲さがあった。

<span class="fontBold">グローリーはロボットによる自動化ノウハウを10年以上蓄積してきた </span>(写真=的野 弘路)
グローリーはロボットによる自動化ノウハウを10年以上蓄積してきた (写真=的野 弘路)

 臨床検査受託大手、H.U.グループホールディングス傘下の富士レビオ・相模原工場(神奈川県相模原市)。2台の人型ロボットがベルトコンベヤーに載って次々と流れてくるウイルスの抗原検査キットを紙箱に詰め込んでいく。よく見ると紙箱の3面の縁の折り面も素早く折り込み、キットを収納している。

抗原検査キット、増産の黒子

 2台のロボットの前にはキットを送り込む作業者がいるが、ロボットはこの作業者の熟練度と連動して動作スピードを変えられる。いわゆる人と共働きする「協働ロボット」だ。

 箱を広げる、押さえる、蓋の面を閉じるといった作業をすべてロボット1台でこなす。箱のゆがみやずれなども最新のセンシングで対応し、キットを正確に入れていく。かつては8人の作業者がいたが、今は1~2人だ。

 このラインは2019年に稼働し始めた。富士レビオの当時の導入責任者、駒井孝哉・宇部工場長は「(作業中のロボットを囲う)柵は不要で、最大の特長はとにもかくにもコンパクト。受注量に増減があったり、ほかの製品をパッケージングしたりするときでもフレキシブルに対応できる」と満足げだ。富士レビオは新型コロナウイルスの抗原検査キットでも指折りのメーカー。目下、増産中だがロボット効果で安定して受注をこなしている。

 実はこの全長15mに及ぶ自動化ラインを請け負ったのはグローリーだ。読者はグローリーといえば貨幣処理機の国内最大手のはずと思うだろう。なぜ、ロボットの自動化ラインに名前が挙がるのか。

 百聞は一見にしかず、ということで同社の主力生産拠点である埼玉工場(埼玉県加須市)を訪ねた。

 釣り銭機を組み立てる2階は壮観の一言だ。カワダロボティクス(東京・台東)の人型ロボット30台がひしめき、80人の作業者と二人三脚で釣り銭機の各ユニットを製造する。

連係プレー、生産性50%向上

働きはまるで千手観音
●グローリー埼玉工場で稼働する様々な協働ロボット
<span class="fontSizeL">働きはまるで千手観音</span><br>●グローリー埼玉工場で稼働する様々な協働ロボット
(写真=5点:的野 弘路)
[画像のクリックで拡大表示]

 ユニットで100%自動化を達成しているのが、紙幣を取り込む「カセット部」。6つの部品をピックアップしてセットする「段取り」から始まり、ギアや電子部品の組み付け、最後の検査までロボットの連係プレーは見るも鮮やかだ。

 検査では部品のかみ合わせやシールが貼られているかなど46項目を1分以内に画像認識技術を用いて点検する。束になったダミーのお札を正確に数えて、1枚ずつ取り込むテストも余裕しゃくしゃくだ。