墓石販売や霊園開発に新風を巻き起こす若手起業家がいる。樹木葬や永代供養など幅広いスタイルに対応し、墓石のデザイン性や広告戦略にもこだわる。多様化する人生の「エンディング」に寄り添う姿勢が、多くの人の支持を得ている。

(写真=山下 裕之)
(写真=山下 裕之)

 「とにかく大きな墓石をなるべく多く売るのがいいとされてきた。でも、時代の流れとは合わないと感じたんです」。茨城県内のとあるお寺の一角でそう振り返るのは、阪神総商(兵庫県尼崎市)の田中元気社長だ。灰色の迫力のあるお墓が立ち並ぶ中、同社が開発を手掛けた一区画だけ様々な色や形の墓石やハーブなどの樹木が並び、まるで庭園にいるようだ。

 阪神総商は近年増えている樹木葬や永代供養に対応した霊園開発を手掛ける。通常何世代も引き継ぐお墓だけではなく、一人用や夫婦用など人数に応じた小さなお墓を提供し、デザイン性にもこだわる。樹木葬では英国式庭園の専門家などを起用し、シンボルツリー以外に花やハーブで春夏秋冬を彩る。

<span class="fontBold">田中社長は本当に必要とされる霊園の在り方を追求する。一人用のお墓も</span>(写真=山下 裕之)
田中社長は本当に必要とされる霊園の在り方を追求する。一人用のお墓も(写真=山下 裕之)

 家業を継ぐ会社が多い業界にあって、あえて起業した田中氏は異色の存在だ。「核家族化が進み、誰もが地元に住み続けるわけではない。その人にあった場所やサイズで、本当にニーズのあるお墓を提供したい」(田中氏)という。

 阪神総商の前身となる「阪神石材」を設立したのは2011年、30歳の時だ。飲食店を経営する両親のもとに生まれた田中氏にとって、事業を起こすのは当たり前だった。

 「遊ぶより、仕事の方がおもろいで!」。あこがれていた親友の父から聞いた一言で工業高校を中退し、20歳で初めて起業したが、志半ばで終わる。介護ビジネスブームのさなかで、お墓参りに行けない高齢者が多いことに目をつけ、お墓参りの代行・同行サービスができないかと考えた。だが「営業戦略も何もなかった」。資金500万円は半年とたたぬ間に消えてしまった。

 事業内容を見直すため、いろいろな人に会う中で出合ったのが、現在同社が取り組む霊園開発・墓石販売という業界だ。業界大手でも年商数十億円程度で、代々受け継ぐ中小規模の企業が多く、「全国展開すれば大手になれるかもしれない」と感じた。

墓石販売に感じた限界

 「3カ月雇ってくれませんか」。業界大手の社長に頼み込むと気に入られ、墓石販売の会社で半年間営業のイロハを学べることになった。修業後は自分の会社に戻るつもりだったが入社を打診され、結果的に約9年間を前職で過ごすことになる。「結果的にこの時学ばせてもらったことが独立後に大きく役に立った」