広島県に本社を置く社員100人ほどのメーカーが作るレザースニーカーが大人の消費者に人気を集めている。老舗のゴムメーカーから新たに立ち上がった事業が、グループの屋台骨を支えるまでに成長した。国内ではほとんど残っていない古い技術を逆手にとって、付加価値を生み出した。

<span class="fontBold">スピングルカンパニーが手掛ける「スピングルムーヴ」ブランドのスニーカー(左)。製造は手作業が多い(右上)。広島県府中市の本社は入り口付近に靴の模型を掲げる(右下)</span>(写真=右2点:森本 勝義)
スピングルカンパニーが手掛ける「スピングルムーヴ」ブランドのスニーカー(左)。製造は手作業が多い(右上)。広島県府中市の本社は入り口付近に靴の模型を掲げる(右下)(写真=右2点:森本 勝義)

 「ソールの形状が足の裏にフィットするので、とても履き心地がいい」。人気の靴ブランド「スピングルムーヴ」のスニーカーを愛用する40代の男性会社員はニッコリほほ笑みながらこう話す。

 同ブランドのスニーカーはゴム底部分が巻き上がるように靴上部と接合しているため、足になじみやすい。足の甲を覆う本体はカンガルーなどの革を使っており、カジュアルとビジネスのいずれの服装にも合わせられる。値段は1足2万円ほどが主力と安くはないものの、30〜50代を中心とした顧客に人気を集める。

 個性的な外観などからファッション界からも注目され、パリコレクション、ミラノコレクションのショーに採用された。スニーカーブームの中「大人向けのスニーカーブランド」で確かな地位を築いている。

 手掛けるスピングルカンパニーは広島県の南東部、府中市に本社を置く社員100人ほどの靴メーカーで、他のブランドの製品も含めて年20万足ほどを製造する。同じ建物に本社を置く1933年創業の老舗ゴムメーカー、ニチマンが97年に子会社として立ち上げた。ニチマン創業家出身で5代目の内田貴久社長がスピングルカンパニーの社長も兼務する。

 ブランドのスピングルムーヴがスタートしたのは、会社を立ち上げて5年後の2002年だった。同ブランドの定着に伴いニチマングループの一子会社から中核会社に成長。近年はグループ売上高約40億円のうちトップを占め、屋台骨を支える存在となっている。

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