国内市場が頭打ちの中、海外で成長して利益を増やす事業構造への転換を果たした。成功の秘訣は二面性だ。一方にあるのは、世界で共通の味と品質をかたくなに守り続けるこだわり。もう一方には、現地の味として溶け込ませるために使い方を問わない柔軟さがある。(関連記事:キッコーマン・堀切会長「8家の切磋琢磨、革新生む」

<span class="fontBold">ドイツのスーパーマーケットでの店頭販売の様子(上)。世界の各国で本醸造のしょうゆやその派生品を販売している(下)</span>
ドイツのスーパーマーケットでの店頭販売の様子(上)。世界の各国で本醸造のしょうゆやその派生品を販売している(下)

 「え、チョコレートソースにしょうゆを入れるの?」。こう驚いて顔を見合わせたのは、料理をテーマにしたブログで月間50万回のアクセスを誇る人気ブロガーや料理好きな著名インスタグラマーたち。彼らがその一挙手一投足を見守っていた有名シェフは「これでコクが出て香りも豊かになるんだよ」と種明かしをする──。

 こんなやり取りが繰り広げられていたのはドイツ。食品大手のキッコーマンの現地法人が開いた、しょうゆを使ったレシピを紹介する料理教室での1コマだ。

 現地で暮らす人たちならではの発想を生かして、現地の食文化にしょうゆを溶け込ませるのがキッコーマンの狙いだ。「現地の味」に必須の調味料に育て上げようと、毎年のように料理教室を開催している。ドイツだけではない。他の欧州の国々や米国などでも現地法人が定期的に開いている。

10年間で時価総額6倍以上に

 利根川と江戸川に挟まれた野田(今の千葉県野田市)でしょうゆを製造していた8家が合同して野田醤油(今のキッコーマン)を設立してから100年余り。国内で1000社以上のしょうゆメーカーがある中で、キッコーマングループ(キッコーマンとヒゲタ醤油)は国内市場の約3分の1というトップシェアを誇る。

 業績は絶好調と言っても過言ではない。2021年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店が休業した影響を受けたものの、連結売上高は前の期比微減の4681億円で持ちこたえ、営業利益は7%増の426億円、純利益は8期連続最高益となる288億円だった。

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