殺虫剤市場で首位のアース製薬が16年連続の増収で急成長を遂げている。経営トップが商品開発を主導する体制から、あらゆる社員がヒットの種を持ち寄る組織へと変貌。掃除用品などの日用品事業で次々とヒットを飛ばし、主力事業に育て上げた。

ずらりと並ぶ水色の缶──。大型ホームセンターの日用品売り場でひときわ目を引くのが、排水管用の洗浄剤「バブルーン」の売り場だ。人気ユーチューバーに紹介された動画のサムネイルや展示用の泡の模型など、趣向を凝らした商品ディスプレーに買い物客がつい足を止める。

排水管の汚れを泡で一気に押し出す新しいタイプのこの洗浄剤を開発したのは、殺虫剤大手のアース製薬だ。2019年8月の発売以来、累計200万本超を売り上げる大ヒット商品となった。16年に販売を始めた掃除用品シリーズ「らくハピ」のラインアップの一つで、排水管の汚れが落ちる様子を映した動画がSNSに投稿されたことをきっかけとして人気に火が付いた。
日用品が殺虫剤を追い越す
「アースジェット」など殺虫剤製品のイメージが強いアース製薬。殺虫剤市場ではシェア5割を超える国内トップメーカーだ。直近の20年度(20年12月期)はコロナ禍の巣ごもり需要と良好な気象条件の後押しを受けて、売上高1960億円、経常利益116億円と共に過去最高を記録した。
好調なのは直近だけではない。05年度から16期連続で増収を達成し、この10年間で売上高がおよそ2倍になった。その急成長の原動力こそ、掃除用品や介護用品などの日用品部門だ。国内の殺虫剤市場が頭打ちのなか、日用品部門が事業別の売上高で殺虫剤部門を追い越し、会社の屋台骨といえる存在になった。
アース製薬の創業は1892年。大阪の難波で木村秀蔵氏が家庭薬メーカーとして立ち上げたのが出発点だ。1929年には家庭用殺虫剤「アース」を発売して殺虫剤市場に参入した。
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