デジタルの将来性に着目し、この5月に国内初のスマートフォン専業のデジタル銀行を開業した。営業領域を広げ、銀行になじみの薄い若年層の取り込みを図る戦略だ。同業他社に先駆けて事業化できたのは、挑戦を容認する組織文化が源流にある。

<span class="fontBold">FFGが運営する「ダイアゴナルラン東京」(上)は、みんなの銀行の社員も利用する(下)</span>(写真=吉成 大輔)
FFGが運営する「ダイアゴナルラン東京」(上)は、みんなの銀行の社員も利用する(下)(写真=吉成 大輔)
(写真=吉成 大輔)
(写真=吉成 大輔)

 JR東京駅から徒歩約6分。福岡銀行などを傘下に置くふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が運営するコワーキングスペース「ダイアゴナルラン東京」(東京・中央)は、近未来をイメージした家具が並び、Tシャツに短パン姿のラフな格好をした若者が働く。

 地方銀行初のスマートフォン(スマホ)専業銀行、「みんなの銀行」の社員はこの施設を使用でき、福岡の拠点などと結んでテレビ会議も頻繁に開かれる。心地よい音楽が流れ、従来の銀行のイメージとはかけ離れた雰囲気だ。

社員の約6割が銀行以外

<span class="fontBold">福岡市のFFG本社</span>(写真=長田洋平/アフロ)
福岡市のFFG本社(写真=長田洋平/アフロ)

 今年5月28日に開業したみんなの銀行は、エンジニア、マーケティング、デザインなどに従事する外部採用社員が全体の約6割を占める。中途入社でエンジニアとして働く石野由衣さんは「自分のアイデアを出せる文化があるなど銀行の堅いイメージとは全然違っていて拍子抜けしたほど」と笑う。同じく中途入社でデザイナーの中村隆俊さんも「新しいものを作ろうというベンチャー気質も高い。資金が豊富でダイナミックさもある」と話す。

<span class="fontBold">みんなの銀行のデザインは福岡県出身の世戸ヒロアキさんが担当した</span>
みんなの銀行のデザインは福岡県出身の世戸ヒロアキさんが担当した

 みんなの銀行は、白黒基調のシンプルなデザインのアプリを操作して利用する。スマホ1台で口座開設ができ、ウオレット(普通預金)の出し入れで支払いやATMでの入出金ができる。口座では最大20の「ボックス」と呼ばれる箱を作ることができ、旅費、車購入費などの目的別貯金も可能だ。

 その使いやすさが若年層に支持され、開業から2週間で約4万口座が開設され、そのうち39歳以下が約7割を占める。目標とする「3年間で120万口座開設」に向けて滑り出しは順調だ。

 キャッシュレス決済や人工知能(AI)を活用した業務の効率化など、デジタル化はあらゆる金融機関にとり最も重要な経営課題となっている。ただ地方銀行では専門人材の層や投資余力に限界があることから、対応が遅れがち。そんな中、FFGがなぜみんなの銀行のような取り組みをいち早く始動させることができたのか。

 まず、早くからデジタル事業を手掛けていたことで、一線の専門人材を確保できたことが大きい。みんなの銀行では、エンジニアなどデジタルに関わる人材250人が事業を支えている。

 さらに、経営トップがデジタルを経営の最優先テーマに位置づけ、社内の中核的な経営人材がその最前線に立ってきたことがある。

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