子供に考えさせる側の楽しさ

 「チャレンジャーとして必死だった。教育のニーズにどう応えるかを考え尽くし、何でもできることをしてきた」。TAP時代からのメンバーである広野雅明教育情報センター本部長はこう話す。

<span class="fontBold">教育情報センター本部長の広野雅明氏(左)と東京校の校舎責任者である岡本茂雄室長は、ともに講師として生徒を教え続けている</span>(写真=2点:栗原 克己)
教育情報センター本部長の広野雅明氏(左)と東京校の校舎責任者である岡本茂雄室長は、ともに講師として生徒を教え続けている(写真=2点:栗原 克己)

 後発のTAPは全盛期だった四谷大塚の「日曜テスト」に目を付けた。毎週日曜日のテストのために「予習シリーズ」という参考書で自習するのが当時の四谷大塚。TAPは四谷大塚よりも先取りして学習を進めることによって、実際に日曜テストで生徒が上位にランクインしていった。難関中学に入る目安と言われた日曜テストで高い得点を取れる塾という評判が保護者の間で広がり、後発のハンディを跳ね返した。

合格実績を背景に、校舎数を伸ばしてきた
●SAPIX小学部の校舎数、年間の卒業者数の推移
<span class="fontSizeM">合格実績を背景に、校舎数を伸ばしてきた</span><br>●SAPIX小学部の校舎数、年間の卒業者数の推移
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 当時の中学受験では珍しかった「志望校別特訓」も立ち上げた。学校ごとの出題傾向に合わせたきめ細かな対策により、四谷大塚で育った優秀な生徒が受験が近くなるとTAPに移る流れができる。1989年にSAPIXを立ち上げると多教室展開を始め、今では小学部は東京22、神奈川12など首都圏1都3県に44校舎、関西で4校舎を展開する。

 この間に独自の指導方法を確立している。所属するクラスは毎月のテストの結果で変動する。6年生は授業のたびにクラスを入れ替え、「緊張感がある」との声が子供からも聞こえる。

 同業からは「講師の育て方がうまい」と評される。秘訣は裁量の大きさにあるようだ。冒頭で紹介したような活発な雰囲気の授業を重視し、共通のオリジナル教材を使う以外に講師に縛りを設けていない。

 教育に絶対の解はなく、生徒によって指導法が合う合わないが発生するのは避けられないだろう。それでも「入試は初見の問題で行う以上、解答パターンを暗記するのではなく、その場で考える力が大切」(広野氏)という方針が行き渡っている。

 生徒は予習をせずに授業に臨み、復習で知識を定着させる。この流れが固まっているから、講師は生徒に考えさせることだけに意識を集中できる。説明をした後に、どのタイミングでどう問いかけたら理解が深まり、より関心を引くかを常に考えるようになる。

 裁量が大きいため、講師によって優劣の差は生じるだろう。そのデメリットよりも、講師が自由闊達に授業をするメリットが大きいと考えている。講師として採用しても模擬授業で合格しないと教壇に立たせないという関門を設けることで授業の質を担保している。

 広野氏は「教室の意見や感覚を社内の隅々まで持ち込む」と話す。このため講師出身の管理職の多くが教える現場に立ち続ける。広野氏も週1日算数の講師を務める。主力の東京校の責任者である岡本茂雄室長は社会科講師として週3日、フルに授業を担当している。

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