この記事は日経ビジネス電子版に『VAIOの復活』(3月15~15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月22日号に掲載するものです。

ソニーが不振だったパソコン事業を切り離してから7年弱。独立したVAIOは復活を遂げた。事業規模こそかつての水準とは比べものにならないが、営業利益率は10%を達成。6年ぶりに最上位機種も刷新した。VAIOはどのように復活し、どこに向かうのか。

新型「VAIO Z」を発表した山本知弘社長(右)と林薫PC事業本部長(左)(写真=古立 康三)

 「速さ、スタミナ、頑丈さ、そして軽量性の均衡を破るブレークスルーを実現した」。2月18日にパソコンメーカーのVAIO(長野県安曇野市)が開いた発表会。山本知弘社長はこう述べ、ノートパソコンの最上位機種「VAIO Z」の商品力に自信を見せた。

世界で初めて本体のボディー全体に炭素繊維(カーボンファイバー)を採用し、頑丈さと軽さを高いレベルで両立させた

 ソニーのパソコン事業が独立したVAIOにとって「Z」は、2008年にソニーが発売した「type Z」以来、最上位機種の象徴だった。そのZの刷新は何と6年ぶり。ソニー時代からパソコンの開発に携わってきたPC事業本部長兼イノベーション本部長の林薫氏は「VAIOの技術者はみんなVAIO Zを作りたいと思い続けてきた」と振り返る。

 新型Zの開発プロジェクトのコード名は「FUJI」。最も困難な開発をやり遂げるという決意から、日本一の山の名を冠した。世界で初めてノートパソコンのボディー全体の素材に炭素繊維(カーボンファイバー)を採用。デスクトップパソコン向けの高性能CPU(中央演算処理装置)や最大34時間駆動の大容量電池を内蔵しながら、1kgを切る軽さを実現した。

1100人から240人に縮小

 VAIOブランドのパソコンを手掛けていたソニーが不振のパソコン部門を投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP、東京・千代田)に譲渡すると決めたのは14年2月。JIPが95%、ソニーが5%を出資する形で同年7月に新会社のVAIOを設立した。

 世界で年間500万台以上を販売していたソニーのパソコン事業は、14年3月期の売上高が4182億円で、国内だけで約1100人が関わっていた。海外から撤退し、国内だけで販売する体制で再スタートを切ったVAIOに残っていた社員は240人。売上高は初年度(15年5月期)にわずか73億円まで縮小し、20億円の営業赤字を出した。強力なブランドこそ持つものの、事業自体を一から作り直さなければならないような状況だった。

 独立から約半年後に発売した先代のVAIO Zは「ソニー時代から開発が進んでいたから世に送り出せた」と林氏は振り返る。それ以降、新しい技術をつぎ込まなくてはならない最上位機種は「会社の体力がなく、独力で開発するのは厳しかった」(林氏)。

 そのVAIOは今や、売上高257億円、営業利益26億円(いずれも20年5月期)まで回復した。事業規模はかつての水準とは比べものにならないが、営業利益率は電機メーカーとして高水準の10%をたたき出す。

売上高も営業利益も拡大
●VAIOの通期業績の推移

 15年にVAIOの社外取締役に就任し、19年から社長を務めるJIP出身の山本氏は「経営基盤が整ったことで(VAIO社員の悲願だったZの刷新に)ようやく踏み切れた」と明かす。新型のZは、不振だったソニーのパソコン事業がVAIOという一企業として独り立ちできたことの証しなのだ。

続きを読む 2/4 “とがった”目標は封印
日経ビジネス2021年3月22日号 56~60ページより目次

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