寝転んでできることがある

 こうしたいくつもの取り組みにGo Toトラベルが加わり、20年10月の客室稼働率は7割程度と一般的なホテルの採算ラインまで回復。20年11月期の黒字確保につながった。

 コロナ下でもがいた成果が出ているが、黒字に導いた根本的な理由は元来の高い利益率にある。19年11月期の営業利益率は26.2%。東横インがコロナの影響を受ける前(19年4~9月期)と比べ7.2ポイント、同じく共立メンテナンスのホテル事業(19年4~12月期)と比べても14.5ポイント高い。コロナ以前から「お客さんが2〜3割減っても赤字にならない」(元谷氏)と言っていたビジネスモデルが機能している。

アパは土地と建物を保有し、利益率が高い
●主なビジネスホテルの比較(利益率はコロナの影響を受けていない直近期)
<span class="textColTeal fontSizeM">アパは土地と建物を保有し、利益率が高い</span><br /><span class="textColTeal">●主なビジネスホテルの比較(利益率はコロナの影響を受けていない直近期)</span>
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 近年、急成長を遂げてきたアパは全国に597棟を持ち、客室数は8万7700室(フランチャイズや提携ホテルを含む、20年末時点)。コロナ前夜の直営施設の稼働率は90%(19年12月)で、都内はほぼ100%だった。宿泊先を探す人に、立地や値段から決めてもらうだけでは実現できない水準だ。アパを選ぶ「目的買い」の客が欠かせない。多くのホテルとは、客室のつくりも事業モデルも全く異なる常識破りの経営が高い稼働率につながっている。

 「伝統的なホテルは供給側の満足を押し付けているだけで、使う人のことを考えていない」。元谷氏は日本のホテルはインバウンド特需などにより、工夫しなくても集客できていたと指摘する。

 ビジネスホテルでも一般的な施設は似通っている。14m2ほどの部屋に同じようなサイズのベッド、小型のテレビ。これでも清潔さを保ち、好立地であれば、採算は十分に取れた。

<span class="fontBold">客室は11m<sup>2</sup>と狭いが、ベッドやテレビは大きくし、快適さを売りにする</span>(写真=竹井 俊晴)
客室は11m2と狭いが、ベッドやテレビは大きくし、快適さを売りにする(写真=竹井 俊晴)

 一方、アパの標準客室は11m2ほど。その代わりに快適に眠ったり、寝転びながら仕事をしたりするベッドにこだわった。ベッド幅は標準客室でも140cmとダブルサイズ。米大手ベッドメーカーのシーリーと共同開発した特注品で、身体が沈み込み、深い眠りを得やすいという。ライトやエアコンのスイッチも枕元に集中させている。

<span class="fontBold">1人用の標準客室にも幅140cmのダブルベッドを設置。ベッドは特注品で、身体が沈み込むのが特徴。頭と体の高低差を小さくするため枕はあえて低くする。スーツケースを開けたままベッド下に収納し、引き出しのようにして使うこともできる</span>(写真=竹井 俊晴)
1人用の標準客室にも幅140cmのダブルベッドを設置。ベッドは特注品で、身体が沈み込むのが特徴。頭と体の高低差を小さくするため枕はあえて低くする。スーツケースを開けたままベッド下に収納し、引き出しのようにして使うこともできる(写真=竹井 俊晴)

 寝転んだ足元には50インチの大型テレビ。「一般的なホテルが32インチ程度だったころから、アパはテレビを大きくしていた」(ホテル評論家の瀧澤信秋氏)。照明も明るく、通常のホテルは机上で700ルクス、ベッド上で120ルクスなのに対し、アパはそれぞれ1300ルクス、500ルクスに設定している。

<span class="fontBold">客室で仕事や勉強がしやすいよう、明るいライトを使用。一般的なホテルの照明がベッド上で120ルクスなのに対して、アパホテルは500ルクス</span>(写真=竹井 俊晴)
客室で仕事や勉強がしやすいよう、明るいライトを使用。一般的なホテルの照明がベッド上で120ルクスなのに対して、アパホテルは500ルクス(写真=竹井 俊晴)

 東京都心のアパホテルを利用してみた。客室はやはり狭く、寝転がるか、机に備え付けた椅子に座るかしかできない。浴槽やトイレも窮屈だ。それでも大きなベッドは快適で、寝転ぶと大型テレビが目の前にあるため映像が見やすく、迫力がある。Wi-Fiはサクサク通じ、仕事環境も申し分ない。

<span class="fontBold">浴槽は卵型にすることで長方形のものより湯量を20%節約</span>(写真=竹井 俊晴)
浴槽は卵型にすることで長方形のものより湯量を20%節約(写真=竹井 俊晴)

 アパの部屋作りはビジネスホテルだから必要なサービスに絞り込むという考えだけで終わらせていない。ビジネス客に必要なサービスをより便利にし、とがらせる。「身体から1mは全部豪華にする」とアパ関係者は話す。

<span class="fontBold">テレビは50インチと一般的なホテルのものより一回り大きい。チェックアウトの延長や大浴場の混雑状況なども確認できる </span>(写真=竹井 俊晴)
テレビは50インチと一般的なホテルのものより一回り大きい。チェックアウトの延長や大浴場の混雑状況なども確認できる (写真=竹井 俊晴)

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