少子化で子供向けの出版事業が停滞し一時は経営難に陥ったが、事業の多角化を通じて経営再建を果たした。高齢者向け住宅などの医療福祉分野をゼロから育てたほか、eラーニングや学習塾事業も成長させ11期連続の増収に。ブランド価値や人材といった社内の資産を有効活用し、新規事業を地道に積み重ねてきた結果が花開いている。

<span class="fontBold">高齢者向け住宅「ココファン西船橋」。隣接する保育園の園児たちが時折顔を見せにやってくる</span>
高齢者向け住宅「ココファン西船橋」。隣接する保育園の園児たちが時折顔を見せにやってくる

 千葉県、JR西船橋駅にほど近い高齢者向け住宅。入居するお年寄りと交流するため、隣接する保育園に通う園児たちが定期的に訪れてくる。

 ここは、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」と呼ばれる賃貸住宅だ。有料老人ホームほど高度な介護サービスはいらないが、簡易な生活支援を受けながらバリアフリー住宅で安心して暮らしたい、といったニーズをつかみ、近年広がりを見せている。

 このサ高住運営のパイオニアであり、ここ数年で福祉事業を急拡大させているのが、かつて子供向け教育雑誌で人気を博した学研ホールディングス(HD)だ。福祉事業に本格参入したのは2004年。学習塾やグループ傘下の保育園といった子供向け施設と高齢者向け住宅を隣接させた複合型拠点などが人気を集め、運営するサ高住は全国約130拠点になった。

 1946年に学習研究社として創業して以降、学研HDは学校の授業を補う付録付きの教育雑誌『科学』と『学習』を発行して成長してきた。「学研のおばちゃん」と呼ばれる販売員が各家庭を訪問営業するユニークな販売方式でも知られ、79年のピーク時には科学と学習の合計発行部数が670万部に達した。単純計算で当時の小学生の3人に2人が購読していたことになる。80年には小学生向けの教育塾、学研教室の運営も開始。順調に業績を拡大した。

<span class="fontBold">2010年まで発行していた教育雑誌「学習」と「科学」。付録も評判を呼び小学生から人気を集めた</span>
2010年まで発行していた教育雑誌「学習」と「科学」。付録も評判を呼び小学生から人気を集めた

 しかし、その後待ち受けていたのが、少子化と出版不況だ。2009年9月期まで約20年間減収傾向にあり、ピーク時に1700億円を超えていた売上高も約790億円まで落ち込んだ。稼ぎ頭だった科学と学習も09年度に休刊。3度の早期退職者募集や本社ビルの売却などでしのいだが、1300億円ほどあった内部留保がほぼゼロになるなど一時は経営難に陥った。

 そのどん底だった学研HDが、経営再建を遂げている。医療・福祉分野や進学塾の運営など新たな収益の柱を地道に開拓し、20年9月期まで11期連続増収を達成した。

11期連続増収、6期連続増益を達成
●学研HDの売上高と経常損益の推移
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