コーセーが看板商品の雪肌精で、35年ぶりにロゴを変えるなどブランド戦略を見直した。ロングセラーに育てた過去の成功体験のため社内は改革に慎重だった。それを抑えて進めた全面的な刷新だ。看板商品を見直した理由は何だったのか。その背景と取り組みを追った。

コーセーは2020年に基幹ブランドの雪肌精をリブランディングした。右上はマーケティングを担当する雪肌精企画課。旗艦店(右下)では新たに配合した成分を訴えている

 2月上旬、東京都内にあるドラッグストアの化粧品売り場を訪れると、標準タイプの5段棚の上から下まですべてがコーセーの「雪肌精」ブランド製品で覆われていた。以前は下3段が雪肌精で、上2段はコーセーのそのほかの製品が占めていた場所だ。

 全国のドラッグストアで雪肌精を扱う店は1万5000店。この中の1万店で雪肌精の棚を広げた。売り場が変わったのはコーセーが2020年9月、雪肌精をリブランディングしたのに合わせたためだ。

 発売から35年が過ぎ、累計6000万本以上を販売している基幹商品のロゴやデザインを初めて全面刷新した。高い知名度を持ち、長く業績を支えてきた雪肌精を見直したのには理由がある。独自の強みが徐々に削がれていたのだ。

コロナ以前に始まった苦戦

 1985年に発売した雪肌精は化粧品にイノベーションを起こした製品と業界で評されてきた。トウキ(当帰)やハトムギ、メロスリアといった植物エキスを配合し、自然由来の成分と透明感を訴えた。1993年には医薬部外品にリニューアルし、美白効果を訴求した。

 2010年代に入ると中国人観光客を中心とするインバウンドの需要を捉えた。商品名が漢字で、中国本土でも1990年代から販売していた雪肌精は中華圏での知名度が高く、日本への旅行の土産として定着。2016年3月期には雪肌精ブランドの売り上げは300億円を超え、連結売上高の1割以上を単一ブランドで稼ぐ基幹商品に育った。

 だが近年、売り上げは減少していた。新型コロナウイルスの影響を受ける直前の19年4~12月の雪肌精の国内売上高は前年同期比13%減。日本人は固定客が多く、減少分の多くがインバウンドと見られている。

 海外売上高も同じ期間に38%減った。美白効果があるという個性は模倣品や類似品が相次いだことで徐々に失われていた。20代、30代で使い始めた国内のファンは高齢化している。瑠璃(るり)色のボトルに白地で大きく「雪肌精」と記したデザインも、シンプルなものを好む若年層の開拓を妨げていた。

 販売に勢いがないどころか売り上げが落ちている。それなのにコーセーは抜本的な手を打てていなかった。派生商品を増やすといったテコ入れにとどまっていた。

 変われない理由はロングセラーとして定着した成功体験が大きく、過去を否定するのに消極的になっていたため。コーセー本社の中堅幹部は言う。「リブランディングを聞いた時、本当にやるのかと思った。スムーズにいかないと感じた」。役員級の幹部からも「これだけ事業が大きくなると、変えるリスクが大きすぎる」という声があった。

続きを読む 2/4 商品への愛情か石頭か

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