所得の7割補償で支援

 丸和運輸はここでも、ドライバー第一の考え方を貫いている。同社が開業に必要な手続きなどを支援しており、開業資金はなくても済む。週休2日を前提とする中で、年商600万円以上に上るケースも多い。

 事業を継続する上でキャッシュフローの確保が重要なため、個人事業主への支払いは月末締めの翌月20日払いとしている。物流業界では60日間ぐらい要する例もある。丸和運輸のキャッシュフローの余裕は失われるが、まずはドライバーを優先する。さらに19年、けがなどで配達業務ができなくなっても所得の7割を補償する保険を設けた。

 急ピッチで整備したネットワークなだけに、サービス水準の維持などで苦労したのは事実。当初は、好条件に引かれた働き手が多く集まったが「来る者拒まずで人材を集めた結果、業務指示になかなか従ってくれないというような支障が出てしまった」(MQA募集の責任者)。

<span class="fontBold">働きたい人には少人数の説明会で理解を深めてもらう</span>
働きたい人には少人数の説明会で理解を深めてもらう

 そこで募集に際してはまず、少人数での説明会を通して業務内容をしっかり理解してもらうよう改めた。契約後は座学や先輩ドライバーに同乗する実地での研修によって、サービス品質を高める意識を植え付けていった。

 「喜びを届けるために、荷物は両手でお客様に手渡す。他社では自由な服装もあるようだが、うちはきちんとユニホームを着る。そんな基本動作をしっかり教育していきたい」と和佐見社長。

 現在、EC事業で稼働する車両は3500台まで広がった。MQAの人材の中には、100台以上のトラックを抱える運送会社を経営し始めた人もいる。

次の目標は「ECの川上」

 こうしてEC界の巨人を味方につけ、物流業界の台風の目となった丸和運輸。ネット通販はまだまだ成長が続くと見込まれているが、丸和運輸には今も危機感がある。EC事業者が自ら個人ドライバーを集める動きを見せているからだ。一時は顧客を手放したヤマト運輸も再び荷受量の拡大に動いている。

 そんな事態に対応すべく、同社は今、新たな事業の方向性を打ち出しつつある。それは、物流事業の柱を増やすことではなくこれまで培った知見を生かし、EC事業を深掘りすることだという。

 EC事業者から個人宅への荷物の配送の依頼を受けるだけでなく、配送センター間を結ぶ幹線輸送や、センターそのものの運営など、EC市場の川上に上っていく試みだ。

 技術の進化や新市場の出現で経営環境が目まぐるしく変わる今は、中堅企業であっても立ち振る舞い一つで、大きな下克上を起こせる時代でもある。業界の潮目を読んだ経営者の戦略的行動で旋風を起こした丸和運輸は、まさにその実例と言っていい。